楽しみなような、不安なような、これまで経験したことのない複雑な気持ちで日本シリーズを迎える。59年ぶりの「関西シリーズ」。64年は1歳だったので記憶はない。野球記者になって日本シリーズ取材はいろいろ経験させてもらったが、当然ながら、こういうのは初めてだ。

虎番キャップたちに囲まれた岡田が「分からんわ」を繰り返したのはそういう意味ではないだろうが、それにしても先行きの見えないシリーズである。そこで「話としての話」と断って、こんなことを書く。それはオリックス側は最初から「阪神が相手」と決め打ちしていたということだ。

シーズンの早い時期…といっても交流戦は終わっていた頃である。そこでオリックス関係者と少し話す機会があった。どこまでが本当は分からないが、その口から出た“意味深な話”はこういうことだ。

「阪神との交流戦で投げたウチの先発投手を覚えていますか?」-。6月13日から甲子園で行われた3連戦のスコアブックを繰る。13日が山本由伸、14日が曽谷龍平、そして15日が山岡泰輔という顔ぶれだ。日本シリーズで先発してくるのは山本だけである。

一方、阪神は村上頌樹、西勇輝、そして伊藤将司の順番。全員、シリーズで投げる。しかも2戦目までは順番まで同じだ。なにしろ配置転換でシーズン途中から中継ぎになった山岡はともかくルーキーの曽谷はその時点で未勝利だった。

偶然と言えばそれまで。それでも日本のエース・山本の状態は今更いいとして「手の内を見せない」という意味で徹底されていたことになる。さらに言えば、この交流戦、オリックスは指揮官・中嶋聡は体調不良で不在だった。

さすがにそこは仕組まれたことではないだろうが、現実として岡田阪神は中嶋オリックスと交流戦では戦っていないのだ。明らかに最初から阪神を日本一連覇のターゲットにしていたオリックス。阪神はどうか。この日、岡田に問うてみた。オリックスが勝つと思っていたのはいつ頃からか-。

「そんなん最初から思ってたよ、それは。やっぱ力あるからな」。答えは明確だった。当然、阪神側もオリックスの調査は進めているはず。もちろんデータだけが重要でもないのだが。勝負はやってみないと分からない。38年ぶり日本一はなるか。それとも-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)