指揮官・岡田彰布は先日「いまの阪神は面白くない野球」という、いかにもこの人らしい表現をしていた。少しだけ振り返る。

「強いチームになってくる方が面白くないチームになるよな。打つチームの方が面白いもんな。何点取られても取り返しよるような。でも何点も取られたらあかんよ、野球は。140も試合したら」

独特な表現ではあるが、要するに勝つチームの野球とは意外性からは遠い、着実なものということだろう。その背景にはプレーに関する具体性もある。そんなことを考えせられた、この日の日本ハム戦だ。

岡田がもっとも嫌うのは7回の左腕・及川雅貴が見せた様子だろう。2イニング目のこの回、1死一塁からレイエス、野村佑希に連続で四球を出す。レイエスには5球、野村に対しては4球で歩かせてしまった。

野球でよく言われるのは四球で走者をためるとビッグイニングになるということ。実際にその後で連打を食らい、4点のリードをはき出して逆転されてしまった。シーズンならムードが悪くなる場面である。

現状の及川は先発ローテの7、8番目という位置づけの調整が続く。相手のあること、いつも抑えられるわけではない。それでも先発なら早い回に失点しても続投するケースが多いが、走者をためると崩れてしまうところを見せたのは反省点になるだろう。

一方、安心させるというか「この感じ」と虎党に思わせたのは4回の攻撃か。1番・森下翔太、2番・中野拓夢の「侍ジャパン合流のため、早上がり組」の連打でつくった無死二、三塁の好機。ここで3番に入ってきた近本光司は初球を引っ張って二ゴロ。この間に1点ゲットだ。

さらに4番・大山悠輔は右前に流し、オープン戦初安打。2点を先制した。近本なら当然、安打を打ちにいってもおかしくないし、大山にしても長打狙いでもいい。それでも「まず得点」を優先しての打撃だ。

岡田が言うところの「面白くない」というのは、例えばこんな感じだろうか。ファンにもいろいろなタイプがいるだろうがシンプルに「本塁打を見たい」という向きにはイマイチ面白くなかったかも。

それでも長いシーズン、勝っていくためには例えばこういう攻めは重要だ。ほとんどの虎党は勝てば喜ぶはず。オープン戦とはいえ、そろそろ勝ちたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

日本ハム対阪神 7回裏日本ハム2死二、三塁、郡司に逆転となる2点右前適時打を浴びる及川(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対阪神 7回裏日本ハム2死二、三塁、郡司に逆転となる2点右前適時打を浴びる及川(撮影・佐藤翔太)