阪神球団として「史上初」となったオープン戦初戦から7連敗直後のことだ。8日のヤクルト戦に8回6失点で大逆転負けを喫した試合である。「OP戦の7連敗は史上初みたいですね」。そう声をかけると指揮官・岡田彰布は「おお。ちょうどエエやないか…」と不敵に笑ったのである。

何が「ちょうどエエ」のか。言うまでもない、今季が阪神球団史上初めて「連覇」に挑むシーズンだからである。「史上初」の前に起こった「史上初」。OP戦とはいえ、負けて気分がいいはずもないけれど、縁起を担ぐタイプの岡田としてはそんな発想も沸いたのかもしれない。

そこに新たな「史上初」が加わった。この日のオープン戦の観衆だ。ライバル巨人を本拠に迎えての1戦、さらに甲子園ではこれがラストOP戦などということもあってか4万1129人もの観客が入った。

いわゆる「満員御礼」だ。細かいが、この満員は結構、すごい。シーズン中は年間予約席をカウントしての観衆発表。つまり年間でシートを購入している人が仮にその日、球場に来なくてもその分は発表に含まれている。だがOP戦の巨人戦にはそれは適用されない。正真正銘、4万人以上が甲子園に足を運んだことになるのだ。

正直、他球団ではちょっと考えられない動員力だろう。それもこれも昨年の日本一を受けて「今年も頼むで!」という虎党の願いがこもっての大入りであるのは想像に難くない。

その前で阪神はついに9連敗を喫した。「史上初」も度が過ぎまっせ…とチラリ思ったりもするが、とりあえずOP戦。シーズンに入ったら頼むぞと期待するのだが、少々、心配なのはブルペンだ。投手を中心とした守りの野球が強みのはずのチームが四球から失点するケースが目立つ。

「きょうも四球と、エラーとな。自滅やからなあ。う~ん」。そう言ったのはヘッドコーチの平田勝男だ。さらにブルペンの開幕メンバーはまだ決めていないと明言した岡田も「自滅やからなあ」と同じ言葉を発したのである。

この日は相手の四球、失策に乗じて反撃したが自軍もそれをやってしまった。その結果の1点差負け。昨季とは違う様子なのは事実だろう。あと10試合のOP戦でこれを修正し、勝てるムードを出していけるかどうか。「史上初」はそこにかかっている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)