オープン戦とはいえ3万510人が入ったバンテリンドーム。公式戦に近いムードになったが、その前で阪神サイドからすれば、失礼ながら、まったりした試合になった気がする。9回こそ中日の守護神マルティネスから1得点し、沸かせたが、全体的になんとなく重かった。

そう感じる理由の1つはハッキリしていると思う。阪神打線に長打が出なかったからだ。昨季まで長打力が課題とされていた中日には広いドームで2本塁打が出るなどドラゴンズファンを盛り上げた。対して阪神は中日をしのぐ10安打を放ったが、すべて単打。試合結果はもちろん、華やかさでも負けた気がする。

それも無理はないといえば、これまた失礼かもしれないが、それなりの理由がある。森下翔太、佐藤輝明がスタメンから外れただけでなく不出場。長打を期待される打者が少なかったという事実があった。

3番右翼・森下、4番一塁・大山悠輔、そして5番三塁・佐藤輝-。キャンプからオープン戦を通じて指揮官・岡田彰布は刺激を与えようといろいろ言ったり、仕掛けたりしているがシーズンが始まれば、まずクリーンアップはこの3人でいくだろう。

昨秋から春の宜野座キャンプ、オープン戦序盤にかけては井上広大だったり、野口恭佑だったりといろいろ期待の名前が出てきたがプロは厳しい。この試合、マルティネスからの適時打など2安打で光った前川右京にしてもシーズンでそういった面々と伍(ご)して、すぐに大きく活躍できるかと言えば簡単とは思わない。

阪神打線の1つのキーは近本光司、中野拓夢の1、2番コンビに加え、8番・木浪聖也の左打ち3人衆である。だが、そこに加え、クリーンアップが働いてこそ虎党を納得させる試合ができるし、勝てるのだ。

だからこそ、その3人には自覚が重要である。大山はともかく、あとの2人はもう少しどっしりした雰囲気がほしい。欠場について岡田は「使わんかっただけやん。選手起用まで言われたらかなわんわ」。

この日は今年初めて「ナイター→デー」と続く調整が難しい状況でもあった。それがどうした…と言えばそれまでだが、何があっても4番を任せる大山は別にして、若い2人がいいパフォーマンスを出せるように岡田は策を練っていくのである。うまく運んでほしいと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 2回裏を終えベンチ前でナインを迎える佐藤輝(撮影・加藤哉)
中日対阪神 2回裏を終えベンチ前でナインを迎える佐藤輝(撮影・加藤哉)
中日対阪神 特殊な器具を手に試合前練習に臨む阪神森下(撮影・前田充)
中日対阪神 特殊な器具を手に試合前練習に臨む阪神森下(撮影・前田充)