これは面白い。乱打戦の末、10-9で阪神は勝った。その中にいろいろな要素が詰め込まれている。虎党が歓喜したのは佐藤輝明、森下翔太と主力にアーチが出たことか。同点に追いついた7回は推定年俸10億円で「球界最高年俸」とされるホークス守護神オスナを攻略して…というのも楽しい。これが交流戦、いや日本シリーズだったら-。そう思う試合になった。

もっとも手放しでは喜べない。日本一に輝いた昨季のMVPで今季も先発ローテの中心となるべき村上頌樹が衝撃の8失点。それでも負け投手にならなかったのがこの試合を象徴する。

「強い方が面白くないチームになるよな。打つチームの方が面白いもん。何点取られても取り返しよるような。でも何点も取られたらあかんよ、野球は」

オープン戦前に指揮官・岡田彰布が言っていた言葉を思い出す。「投手を中心にした守りの野球」。それが理想の岡田にすれば気に入らない展開かもしれない。だが面白い。名古屋でのジリジリした試合の後だけに余計、そう感じた。

そんな中、序盤だったので記憶から抜け落ちそうだが「めずらしい」と思ったシーンがある。助っ人ノイジーのダイブだ。村上が投げていた2回。先頭の山川穂高が左前打で出た無死一塁の場面だ。ここで近藤健介の打球は左翼線へ飛んだ。左翼ノイジーは懸命に走るが間に合わず、最後はダイブする。しかしグラブは届かず、二塁打になった。

外国人の外野手がオープン戦の2回にダイビングキャッチを試みるとは-。虎党なら知っているだろうがノイジーは米国では内野手だった。だからこそのプレーでもあるが、それにしても気合が入っている。

「あれねえ。正直、人工芝でスパイクが止まらず、ああいう形になったのかもしれません。でも日本人ぽいというかサムライ・ダイブですね」。外野守備走塁コーチの筒井壮は笑った。

助っ人とはいえ、外国人選手頼みではない岡田阪神。ノイジーの定位置・左翼は前川が虎視眈々(たんたん)と狙っている。ガッツあふれるプレーも自然に出るのだろう。途中出場で2安打の前川に負けず、5回には適時打も放った。“決勝点”は8回無死満塁から牧原大成のグラブをはじくノイジーの二ゴロ。OP戦は劣勢とはいえ、助っ人と若手の競争がチームに刺激を与えれば、やはり、今季も楽しみなのだ。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ソフトバンク対阪神 5回表阪神2死一、二塁、左前適時打を放ち、手をたたくノイジー(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 5回表阪神2死一、二塁、左前適時打を放ち、手をたたくノイジー(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 2回裏ソフトバンク無死一塁、近藤の打球に飛びつくも捕球に失敗する左翼手のノイジー(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 2回裏ソフトバンク無死一塁、近藤の打球に飛びつくも捕球に失敗する左翼手のノイジー(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 ソフトバンクに逆転勝利した阪神(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対阪神 ソフトバンクに逆転勝利した阪神(撮影・岩下翔太)