宮城きっての伝統校が、初戦突破した。仙台一は村田に勝利した。右横手のエース藤島誠也(3年)が相手打線を3安打に抑えて高校初完封、打っても先制の三塁打を放つなど活躍した。

 仙台一の秀才エース藤島が、3安打完封でチームを勝利に導いた。練習試合を含めても高校入学後初の0行進に、建部淳監督(38)は「100点です。エースさまさま」と評価。それでも本人は「80点くらいの出来で満足できない」と冷静だった。「それ(満足しないこと)が練習を頑張れる原動力ですから。勝てたことは次につながるが、思うところに思うボールがいかなければ満足や満点はないです」ときっぱり言った。

 中日の山井を「意識しなかったわけでもない」という黒縁のスポーツ眼鏡を輝かせ、テンポ良く投げ込んだ。速さはないが、緩急を使って打者のタイミングを狂わせた。今春から非常勤コーチに就任した元ロッテ佐々木信行氏からのアドバイスも生かし、打たれたヒットは3、4回の3本だけ。バットでも2回裏2死二塁から、左中間へ先制の三塁打を決めてみせた。

 将来は「古生物学者になりたい」という。小学生の頃に行った科学館で「この化石が生きていた時代はどんな世界だったのだろう」とロマンを感じ、「秋保などの山に行けば、宮城でも取れますよ」と自ら採掘に出掛けるほど夢中になった。自分で掘り出した「哺乳類の化石」が宝物で、高校の授業でも地球科学や地理学に興味を持つ。

 だが「今は野球ばっかりでいいと思っています」と、2回戦の仙台三戦へ目を向ける。「勝てない相手じゃない。自分たちの力を出せれば」。最後の夏に「一高」旋風を巻き起こすまで、藤島は腕を振る。【成田光季】

 ◆藤島誠也(ふじしま・せいや)1998年(平10)3月7日、仙台市生まれ。幸町中1年時から軟式野球部で本格的に野球を始め、主に二塁手。仙台一入学後に投手一本に絞り、1年秋からベンチ入り。174センチ、67キロ。右投げ右打ち。両親と姉。血液型AB。

 ◆仙台一と仙台二 ともに明治期に旧制中学として創立された宮城県屈指の進学校。野球部の歴史も古く、仙台一は創部119年目、仙台二は116年目の伝統を持つ。甲子園出場はともに夏3度。戦前から毎年春に開催されている一、二高定期戦は「杜(もり)の都の早慶戦」とも呼ばれ、戦後通算成績は仙台一が31勝、仙台二が30勝で9引き分け。