多賀城のエース右腕鈴木新(3年)が、鼻血のアクシデントに負けず3失点の完投勝利を収めた。8回表の味方攻撃中にベンチで鼻から出血。治療による9分間の中断を挟んで、その裏のマウンドに上がった。8、9回とも3者凡退に仕留めて1点差を守り切り、昨夏8強の東北学院を下した。

 最後の打者を得意のシンカーで見逃し三振に仕留めると、思わず跳びはねた。「ストライクがしっかり取れて、ピンチで抑えられた」。2年ぶりの初戦突破を喜ぶ鈴木新のユニホームののどの部分は、少し血がにじんでいた。

 ベンチで声を出し続け、緊張感が高まっていた影響からか、8回に突然鼻血が止まらなくなった。「練習中はあったけど、試合では初めて」と鈴木新。すぐに頭を氷で冷やし、看護師から止血処理をされた。わずか1点差で9分間の中断。普通ならリズムを崩してもおかしくないが、春の中部地区大会でも「審判の判定を巡る協議で」(鈴木新)中断を経験。再び何食わぬ顔でマウンドに上がり、2イニングを完璧に抑えた。

 渡辺浩一監督(51)は「あいつがダメなら仕方ない」と鼻血治療中に控えに投球練習をさせず、すべてを託した。2年夏から背番号1を背負う鈴木新は、春の地区大会敗者復活戦以来、公式戦ようやく2勝目。「勝った経験が少ないので、とりあえず勝てるところまで」とエースの目標は控えめだが、昨夏8強・東北学院からの136球完投勝利は、3回戦以降へ大きな自信になりそうだ。【久野朗】

 ◆鈴木新(すずき・あらた)1998年(平10)2月6日、宮城県七ケ浜町生まれ。松ケ浜小3年の時、七ケ浜パイレーツで野球を始め捕手。向洋中では軟式野球部に所属し投手。多賀城では1年秋からベンチ入り。173センチ、70キロ。右投げ右打ち。家族は両親と祖父。