3年ぶり3度目の甲子園出場を目指す飯塚が、劇的勝利で8強一番乗りを決めた。福岡大大濠相手に9回サヨナラ勝ち。打線に左打者7人をそろえ、優勝した12年以来3年ぶりの8強だ。この日、選手登録されたばかりの榎田瑠也内野手(3年)が先発起用に応え、2本の三塁打で同点、サヨナラのホームを踏むラッキーボーイ的な活躍だった。

 延長戦目前の接戦にケリをつけたのは、4回戦まで飯塚のスタンドで声援を送っていた背番号18の榎田だった。1-2で迎えた7回、先頭打者として右越え三塁打を放ち、同点のホームを踏むと、2-2で迎えた9回は1死から右中間への三塁打を放って、犠飛でサヨナラのホームイン。仲間に抱き付かれ、照れ笑いを浮かべた。

 「いい場面で打てていなかったので、何も考えずに開き直って打った」。2回無死一、二塁のチャンスでバントを空振り。飛び出した二塁走者がアウトとなり、結局無得点。だが、その後3安打を放ち、借りを返した。

 春の大会まではレギュラーだったが、調子が落ち、覇気もなかったことから夏の大会前にベンチから外された。「内心ショックだった。でも、表に出したらチームの士気が下がると思ってこらえた」。

 福岡は大会前に2度、大会中も5回戦前に入れ替えが可能。吉田幸彦監督(59)は練習態度を改めた榎田をベンチに戻した。前日(17日)の練習後、出番を告げられた榎田は、慌てて背番号をユニホームに縫いつけた。

 右投手対策も功を奏した。吉田監督はこの日、バッテリー以外、1番から7番まで7人の左打者を並べた。7番の榎田は「これだけ左がいると、相手がどんな攻め方をしてくるのか、情報を共有しやすい」と、前を打つ6人から助言をもらい、打席に生かした。

 春は県大会決勝で敗れたが、1年時からレギュラーを張ってきた3年生が多く、この夏が集大成となる飯塚。大阪から野球留学で福岡に来た榎田は「甲子園に出て、あっちに戻れればうれしいですね」と、福岡県代表としての凱旋(がいせん)を誓った。【福岡吉央】