今秋ドラフト候補で最速153キロ右腕の東海大市原望洋(千葉1位)島孝明投手(3年)が、奪三振ショーを演じた。5回から2番手で登板し、9回まで毎回の10奪三振で2安打無失点に抑えた。直球の最速は150キロを計測。視察した10球団24人のスカウトに、高校生トップクラスの速球を披露した。

 捕手のミットに収まってから、バットが空を切った。島の速球に、満員のバックネット裏もどよめいた。5回は「流れを変えようと思った」と、全18球ストレートでねじ伏せた。ソフトバンクのスピードガンでは150キロを連発し、いきなり2者連続三振。9回最後の打者から10個目の三振を奪うと、拳を握って雄たけびを上げた。「気持ちを抑えていこうと思ったけど、アドレナリンが出ちゃいました」。今春公式戦最長の5回を投げたエースは、笑顔で汗をぬぐった。

 力勝負だけではない。6回は変化球主体に切り替えて、3アウトはすべて三振で取った。その後も直球とスライダーで三振の山を築いたが、「体の開きが早くて、狙ったところにいかなかった。苦しいピッチングだった」。千葉県大会では無四球だっただけに、この日与えた5四死球を反省していた。

 全国屈指の強豪を抑えて乗り込んできた。2月のランニング中に左足首を捻挫した影響で、今春の県大会はリリーフ起用だったが、15日に仙台育英(宮城)との練習試合で今季初先発。昨夏甲子園準優勝校から3回で8三振を奪い、5回まで11奪三振で無失点に抑えた。球数が100球を超えた6回に失点したが、手応えは十分。「次は先発で行きたい気持ちがある」と力強く言った。相川敦志監督(55)も「様子を見てから決めるが、(今大会で)先発させる可能性はある」と話した。

 島自身も驚く飛躍だった。冬の走り込みと筋トレで体重が4キロ増えて82キロとなり、ユニホームや練習着は「Oサイズ」になった。昨秋まで最速148キロだったが、4月29日に自己最速の153キロを計測。「入学してから140キロを超えるのに1年かかったのに、気づいたら150キロ出ていた」と、不思議そうに言った。

 周囲の反応も一変した。新聞などに取り上げられて「30、40通はメールが来た。全然連絡してなかった友達にも『すごいな!』とか言われて、期待に応えるのは大変だと思った」。注目度急上昇の島が、プレッシャーをはねのけて進化を続けていく。【鹿野雄太】

 ◆島孝明(しま・たかあき)1998年(平10)6月26日、兵庫・宝塚市生まれ。1歳から千葉・佐倉市で育つ。青菅小1年で軟式野球を始め、ポジションは捕手。井野中では佐倉シニアに所属。投手に転向し、3年時にエースとして全国大会4強。遠投110メートル。180センチ、82キロ。右投げ右打ち。好きな投手はヤンキース田中。家族は両親と姉2人。