球児たちは、家族の絆を大きな力に変えている。浜松湖南の小岩奏楽(かなで=3年)は10人きょうだいの長男で、しっかり者のリーダーだ。チームでは責任感ある代打の切り札として存在感を示す。

 30人を超える部員たちと汗を流す小岩は、自宅で多くの笑顔に癒やされる。10人きょうだいの長男。弟妹の面倒見もよい。練習の疲労もみせず、連日の勉強も確保。背中で文武両道を見せている小岩は「にぎやかすぎるところもありますが、楽しいです。何をするにも人手には困りませんから(笑い)」と大家族の日常に感謝している。

 ヤマハ勤務の父雅美さん(44)の方針で、きょうだい全員が音楽を連想させる名前(次男和音・あのん、三男響輝・ひびき、四男弦流・げんる、長女歌姫・うたら、次女心琴・ここと、五男聖鈴・せれい、三女麗律・れみり、六男舞夢・まいむ、四女風笛・ふうあ)だ。小岩も4歳から電子オルガンを習い、今も休み時間に音楽室のピアノを弾く。「作詞・作曲にも興味があり、将来は音楽方面に進みたい」との希望を持つ。好きな歌手は、父の音楽ファイルから偶然聞いた大江千里。お気に入りの「六甲おろしふいた」は、試合前の「勝負曲」として流し、気持ちを高めている。

 打席では身長164センチ、体重62キロの小さな体にパワーを秘める。5月の練習試合で人生初の本塁打を放ったが、その際は残念ながら家族に見せられなかったという。「夏もみんなで応援に来てくれると思いますし、今度は見ている前で打ちたいです」と意欲満々。チームの代打の切り札は大家族の声援も力に変え、バットで快音を奏でる。【鈴木正章】