平清盛につながる平家の末裔(まつえい)が、戦国含みの埼玉に波乱を起こす! 全国高校野球埼玉大会(7月9日開幕)の組み合わせ抽選会が24日、さいたま市内で行われた。ノーシードの大宮北は、初戦(2回戦)で川越西-越谷南の勝者と対戦。約850年前に栄華を極めた名家の血を継ぐ唐川暉弘(あきひろ)内野手(3年)が、「武士のDNA」の誇りを胸に、最後の夏に挑む。

 大宮北の唐川は華麗なる一族だった。1年ほど前、大掃除中に家系図を発見した父照史さん(54)から、「お前には、平清盛の血が流れている」と驚きの事実を明かされたという。清盛の弟教盛(のりもり)直系の子孫で、広島・福山市の唐川本家にある家系図をさかのぼると、教盛にたどり着く。教科書に載る偉人の名前に「まじか! と思いました」。友人に話しても「うそだろ」と、信じてもらえなかったという。

 平家は壇ノ浦の戦いで滅亡したとされるが、唐川家では「落ち武者となり、瀬戸内でほそぼそ生き延びた」と代々語り継がれている。唐川家は清盛ゆかりの広島と関係が深く、「父の実家(福山市)近辺には、平家ゆかりの寺社などが集まる平家谷(へいけだに)と呼ばれる地区があるそうです」と話した。

 元駅伝選手だった母礼子さん(47)譲りの脚力を生かし、最後の夏に初めてレギュラーをつかみ取ろうとしている。50メートル走で6秒2のタイムはチーム最速。俊足を武器に、最近の練習試合は二塁手で先発出場する。照史さんは「足が速いのは遺伝と、逃げ足が速く生き延びた平家の血ですかね。塁に出てかき回して、チームを勢いづけてほしい」と期待した。

 新チーム以降の公式戦は、秋春とも2回戦敗退。夏はベスト8を目標に、唐川も最後の調整に励む。バットを握ると武士の血が騒ぐのかと思いきや「その血が流れているとは思えない、控えめな野球をします」。資料に残る平清盛像の面影はなく、「初対面の人には、ハーフと間違えられます」と笑う今風のイケメン球児。「日本史にはあまり興味が湧かない」とご先祖様の知識は希薄ながらも、「武士のDNAを持っているはずなので、それを生かして熱く戦いたい」。内に秘めた気迫に、打倒シード校の予感を漂わせた。【杉山理紗】

 ◆唐川暉弘(からかわ・あきひろ)1999年(平11)1月6日、さいたま市生まれ。サッカー少年から一転、小学3年から常磐少年野球クラブで野球を始め、捕手以外全てのポジションを経験した。得意科目は英語で、将来の夢は経営者。家族は両親と、女子野球チームでプレーする姉貴帆さん(早大4年)。167センチ、62キロ。右投げ右打ち。血液型O。

 ◆平氏 桓武天皇につながる武家一族。伊勢平氏という一地方豪族だったが、清盛の祖父・正盛や父忠盛が領地の寄進などで天皇に取り入り、貴族の地位へ上りつめた。清盛は保元・平治の乱で勝利し、武士として初の太政大臣に。日本初の武家政権を確立させたものの、独裁的な政治で反対勢力も多かった。清盛が熱病で亡くなった後、源氏ら他勢力に追い込まれ、1185年の壇ノ浦の戦いで大勢は決し、忠盛の四男・教盛は海に身を投じた。この一戦で平氏は滅亡したとされるが、全国各地で「平家の落人伝説」が語り継がれている。「唐川姓」は島根、徳島、広島などに多い。