第98回全国高校野球選手権(甲子園、8月7日開幕)の各地区大会が、今週末から本格化する。歌手の松崎しげる(66)を父に持つ、和光(西東京)の松崎優輝外野手(3年)は、高校通算15発の4番打者だ。チームを夏5年ぶりの1勝に導く一打で、父の名曲を球場に響かせるつもりだ。

 父譲りの小麦色の肌をした松崎が、悲願の夏1勝をつかみとる。スイングスピードの速さと長打力を買われ、今夏は4番での起用が濃厚。178センチのイケメン外野手は「プレッシャーはあるけど、チャンスで打ちたいです」と照れ笑いを浮かべた。

 野球を始めたのは中1から。きっかけは父だった。父は西武球団歌「地平を駈ける獅子を見た」を歌う。幼少期から西武の主催試合に足を運び、プロ野球選手を間近で見てきた。小学校時代は「校庭で鬼ごっこするくらいで、部活は何もやっていなかった」と言うが、心境に変化が生まれた。「プロ野球選手はカッコ良かった。自分もやりたいと思った」。和光中の軟式野球部に入り、主に1、3番打者として活躍。3年時には町田市の頂点に立った。

 父の“熱血指導”もあって、高校でも1年夏からレギュラーをつかんだ。父も日大一高で甲子園を目指した。松崎は「今でも軽くキャッチボールをしたり、素振りを見てアドバイスをもらったりします」と笑顔で話す。父からの「体を開くな」「顔を上げるな」という助言を生かし、不動のクリーンアップを任される。

 新たな“応援歌”が後押しする。今夏から、和光の得点時に「地平を駈ける獅子を見た」が演奏されることになった。自らのバットで父の名曲を響かせれば、夏5年ぶりの1勝は大きく近づく。父は今までも多忙なスケジュールの合間を縫って応援に駆けつけてくれた。試合前夜に大阪でディナーショーがあっても終了後に帰京し、翌朝の試合を観戦。その夜に名古屋でのディナーショーに臨んだこともあったという。9日の狛江との初戦も「仕事の都合がつけば来てくれると思う」と目を輝かせた。

 高校通算15発を放ってきたが、公式戦での本塁打はない。「父にホームランボールをプレゼントしたい」。松崎が“愛のメモリー弾”で父に恩返しする。【鹿野雄太】

 ◆松崎優輝(まつざき・ゆうき)1998年(平10)11月1日、東京・中央区生まれ。和光中1年から軟式野球部に所属。外野手として3年時に町田市大会で優勝。和光では1年夏から背番号「9」でベンチ入り。右投げ右打ち。50メートル走6秒6。178センチ、68キロ。家族は両親と妹2人。