92年夏の甲子園に出場した郡山(福島)が、激闘を制して初戦を突破し、3回戦に進出した。9回に2点差を追いつかれた直後の延長10回に1点を勝ち越し、実力校の東日本国際大昌平に5-4と競り勝った。右翼手の4番芳賀由啓(3年)が3安打2打点、9回には大飛球を好捕するなど勝利に貢献した。

 昨秋、今春とも県大会出場を逃した郡山が、ようやく夏に実を結んだ。「もしかしたらと思っていた。やれるんじゃないかと」。佐藤康弘監督(50)の期待が現実に変わった。2回までに4点リード。2点差の9回に同点に追いつかれる嫌な流れを、延長10回に主将の6番上石(あげいし)達也外野手(3年)の中前タイムリーで断ち切った。

 ヒーローはもう1人いた。4番の芳賀だ。初回に先制の2点三塁打。先頭打者の10回には、中前打で勝ち越しのお膳立て。「ずっと打てなくてチームに迷惑をかけてきた。最後なんで汚名返上というか、4番の仕事ができた」。4-2の9回1死二、三塁では、右翼への大飛球を「いけると思って一気に下がった」と、背走しながらフェンス寸前で捕球。犠飛にしてアウトを1つ増やしたことが、サヨナラ負けのピンチを阻止。結果的に同点止まりとなるビッグプレーになった。

 例年に劣らない戦力をそろえたはずの郡山は昨秋、今春とも県中支部予選で敗退した。終盤に逆転される試合が多く、結果が出なかった。自信をなくしていた中で、6月に準公式戦の県中選手権で準優勝。帝京安積との初戦では課題の終盤に試合をひっくり返し、夏の大会直前にモヤモヤが吹き飛んだ。上石主将は「秋も春も勝つことが一番の薬でしたが、県中(選手権)で勝つ喜びを知った」と振り返り「それが今日の試合につながった」と言った。

 元巨人の伊藤博康監督(46)が率いる東日本国際大昌平との激闘を制した。16日の3回戦は、順当ならシード校・学法石川と顔を合わせる。2年前の4回戦では0-1と惜敗した。佐藤監督は「秋も春も県大会にも出られなくて、1戦1戦チャレンジャー」と無欲を強調。自信を取り戻した、公立の実力校の進撃が始まった。【久野朗】