3年連続の夏の甲子園出場を目指す静岡が、秋季大会3位の藤枝明誠を10-4で下した。7回に1点差まで詰め寄られ、エース村木文哉投手(3年)がリリーフ登板。一打逆転のピンチをしのぐと、8回に4連打などで一挙5得点。注目の対決だったが、王者らしく底力を発揮した。

 7回表、4-5と追い上げられ、なおも2死一、三塁と一打逆転のピンチ。村木が満を持してマウンドに向かうと、球場全体が大きくどよめいた。昨年9月22日、秋季県大会の掛川西戦以来、実に300日ぶりの公式戦登板だ。投球練習から球速表示が140キロを超えると、再び球場がざわめいた。

 村木 出るなら緊迫した場面と思っていました。自分が出て、球場が盛り上がる感じも伝わりました。

 気合が入りすぎたのか、最初の打者に死球を与え、2死満塁とピンチを広げた。だが、続く相手3番を二ゴロに仕留め、ベンチに向かって大きくジャンプしてガッツポーズ。冷静な村木にしては珍しく感情を爆発させた。「久々の公式戦マウンドで1点を争う場面。抑えられて喜びも倍増でした」。

 今春は腰を痛め、公式戦登板を回避。悔しさの中で、体幹を鍛え、フォームを見直して夏に備えた。「投げられない時期も無駄じゃなかった」。復帰した今、胸を張って言える。

 エースの粘投で、相手に傾きかけた流れを取り戻した。8回裏に4番古川竣内野手(3年)の2点適時打を含む4連打、打者一巡で5点を重ねて試合を決めた。栗林俊輔監督(43)も「あそこは村木に任せるしかなかった。さすがですね。打線も立ち上がりから良い流れで点を取れた。ミスはありましたが、初戦はこんなものです」と満足そうに言った。

 県勢では戦後初となる3年連続の夏の甲子園出場へ。王者静高が順調に第1関門を突破した。【鈴木正章】