第4シードの東海大静岡翔洋が劇的勝利で2年ぶりの3回戦進出を決めた。静岡市立に4-3で逆転サヨナラ勝ち。9回1死満塁で1番曽根渉内野手(3年)が左前に殊勲の一打を放った。4月1日付で就任した元巨人捕手の原俊介監督(38)は「夏初陣」で白星。12年ぶりの甲子園出場へ、勢いがつく1勝を挙げた。

 劇的な結末に勝負を決めたヒーロー曽根が泣いた。9回裏に同点とし、なおも1死満塁。打席には原監督が「チーム一熱い男」と信頼を置く曽根が立った。全校生徒の大声援を浴びてバットを構えると、「狙っていた」初球を強振。真ん中低めのチェンジアップを捉えた打球は三塁手の頭上を越えて左前へ。「よっしゃー」と雄たけびを上げた。その直後は喜びと安堵(あんど)感が入り交じり、大粒の涙を流した。

 殊勲の一打を放った曽根を、原監督は「やってくれましたね」と手放しにたたえた。打線は好投手、静岡市立エース寺田敬太(3年)の高低を巧みに使う投球術に苦戦。7回まで4安打と打ち崩せず、3、6回の好機では併殺に打ち取られていた。それでも、原監督は「低めに手を出すな」と選手に指示。精神面では「諦めず、白球に思いを込めろ」と鼓舞していた。

 人生初のサヨナラ打を放った曽根は監督への感謝を口にした。「ずっと下半身を使えと言われていました。今日はその成果が出ました」。原監督は普段の練習で1人1人にアドバイスを送り、プロ生活での経験なども語りながら長所を伸ばす指導をしている。選手の意識も変わり始め、課題が出れば選手間で厳しく指摘し、好プレーには褒め合って結束力を高めてきた。

 第2シードとして臨んだ昨年は、初戦の2回戦で飛龍に0-10の8回コールド負け。昨年から主力の曽根はチームを代表して言った。「次も挑戦者の気持ちで戦い、全員で勝ちます」。屈辱の敗戦から1年。原新監督のもとで成長を続ける選手たちが、12年ぶりの甲子園出場へ絶好のスタートを切った。【神谷亮磨】