4月から東北初の女性監督となった、涌谷の阿部奈央監督(25)が念願の1勝を狙う。

 監督として迎える初めての夏の初戦(2回戦)は、仙台高専との対戦が決まった。「どことやってもやるだけなので。しっかり準備して臨むだけ」と静かに闘志を燃やした。

 涌谷の部長として挑んだ昨夏は、初戦突破を経験している。「部長としての夏とは違う。1勝したいですね」と言った。

 今年3月に前監督が異動して、部長から監督に肩書が代わった。中学時代はソフトボールに熱中。石巻高ではソフトボール部がなく、硬式野球部に入部してマネジャーを兼務しながら、男子部員と一緒に練習した。東京女体育大に進学して、昨年4月、涌谷の体育教諭として赴任した。

 阿部監督のように女性監督が公式戦で采配を振るのは、東北各県の高野連関係者も記憶にないといい、東北初とされる。全国的にも珍しい。

 阿部監督は今春、東部地区予選で公式戦初采配。初戦の2回戦は母校・石巻に5回コールドの0-16、敗者復活1回戦は今夏のシード校・石巻工に1-4と善戦及ばず敗れ、初勝利は今夏に持ち越しとなっていた。

 選手からは「奈央先生」と呼ばれて親しまれ、抽選会でくじを引いた大森優輝主将(3年)は「奈央先生にウイニングボールを何個もプレゼントしたい」と、勝利を誓った。涌谷は1962年(昭37)に準決勝に進出した実績がある。阿部監督は「一生懸命練習している姿を毎日、見ている。その力を引き出したい」と、初勝利への強い思いを胸に秘めた。