つぶれた学帽にボロボロの学ラン、腰に手ぬぐいを下げ、高げたを突っかけ闊歩(かっぽ)する。岩手県の旧制中学の6校には、弊衣破帽(へいいはぼう)というバンカラスタイルがいまだに継承されている。明治時代にハイカラ(西洋文化を取り入れたおしゃれ族)のアンチテーゼとして生まれた硬派集団の「蛮カラ」。高校野球岩手県大会の夏の風物詩でもある「バンカラ応援」が、今年も熱く応援スタンドを盛り上げる。創立120周年を迎える伝統校の一関一では、女性バンカラが活躍していた。

 男の専売特許であったバンカラも、時流の変化にもまれて、姿を変えつつある。十数年前に女性副団長が誕生した一関一応援団に今年2月、新たな女性応援団幹部が誕生した。長髪を振り乱し、破れた学帽にボロ姿で腹の底から声を張り上げる菅原佑理さん(2年)は、その実力が認められ、幹部候補生から最速で幹部に昇格した。

 「プレッシャーは大きいですが、手ぶりに合わせてみんなを絶叫させることができたときの達成感は、表現できません」と、幹部で男子の遠藤成実さん、女性で候補生の千葉真樹さん(ともに2年)と応援をリードする。同校は創立が1898年(明31)と県内で2番目に古い伝統校。女性に門戸が開かれたのは、彼女たちの情熱が校内で認められたことと、進取の精神にあふれるOBの理解もあってこそだ。今では地元市民からも温かく見守られている。両親の反対を押し切って、毎日ボロボロのバンカラスタイルで通学している菅原さん。学校では冬でもはだしが原則だ。「通学中に小さい子供から指をさされ、『変な格好の男の人がいる!』と言われ、心が折れたこともありました」と当初は戸惑いもあったという。