仙台(宮城)の最速144キロ左腕、佐藤隼輔(3年)が仙台商を9回6安打8奪三振無失点に抑え、15日の名取北との1回戦に続いて2戦連続で完封勝利を挙げた。18個の三振を奪った初戦とは違い、打たせて取って勝負どころでアクセルを踏むギアチェンジ投法を披露した。試合は8回に4番笹口大輝捕手(3年)が中越え適時二塁打を放って1-0で逃げ切り、2年連続で3回戦に進出した。

 クールに決めた。伸びのある外角直球で最終打者を見逃し三振に打ち取った佐藤隼は、グラブをポンとたたいて淡々と整列に加わった。ピンチでも顔色1つ変えずに黙々と投げ込む鉄仮面の表情は、2戦連続の完封を達成しても緩むことなく引き締まっていた。

 「球数が多くならないように、うまく打たせてとれた。今までずっと接戦で勝ってきたので、負けるとは思ってなかった。いつも通り投げられた」

 ケガの功名でモデルチェンジに成功した。15日の初戦は18個の三振を奪ったが、力みもあり6回から両足がつり体重も1キロ減ってしまった。その反省から、この日は「7割ぐらい」の力で投げ込み、要所でアクセルを踏んだ。2死で三塁に走者を置いた5、7回、2人の走者がたまった6回はいずれもギアを上げて三振で切り抜けた。「ピンチでは1段階上げた。今まではバンバン三振狙っていたけど、打たせて取るのが自分の投球。本来の姿を取り戻せた」と122球で投げきった。

 プロ4球団10人のスカウトは佐藤隼の変化を感じ取っていた。3人で乗り込んだ楽天上岡良一スカウトは「前の試合より全然いい。反省点を生かして、力みなくギアの上げ下げができている」と絶賛。巨人柏田貴史スカウトも「能力は高い。力の配分を考えて投げられるクレバーさを持っている。先発投手としての資質はある」とほめちぎった。

 持ち前の頭脳は、野球だけではなく学校生活にも生かされている。理系の佐藤隼は約280人いる学年で1桁台の成績を維持する秀才でもある。23日の3回戦は宮城農と対戦する。「次の試合も0点に抑えてチームを勝たせたい」。頭脳的な投球でスコアボードに“0”を刻み続ける。【高橋洋平】