4兄弟の末っ子がヒーローになった。春日部共栄(埼玉)川畑光平内野手(3年)が叡明との激闘にけりをつける決勝適時打を放ち、7-5でチームを4強に導いた。3人の兄は市川越でプレー。しかし末っ子は3年前の埼玉大会決勝戦で春日部共栄が市川越を破り優勝した試合を見て3人の兄とは別の道に進むことを決意。1番、主将でチームを引っ張り、兄たちの果たせなかった甲子園へあと2勝と迫った。

 5-5で迎えた8回表2死満塁。川畑がカウント3-1からの直球をはじき返す。強いゴロが二塁手のグラブの下をすりぬけ中前に抜けた。2者が生還し7-5と勝ち越し。162センチの小柄なヒーローは右手を突き上げた。

 川畑 うれしかった。みんながつないでくれたので何とかかえそうと思いました。

 本多利治監督(59) いい男だねえ~。本当に頼りになるやつ。何とかしてくれる。すごい集中力だったね。

 4人兄弟の末っ子だ。3人の兄、雅裕さん(26=4番一塁手)寛幸さん(23=控え捕手)輝明さん(20=控え投手)は市川越でプレー。ところが四男だけは地元の川越を出て春日部共栄への進学を決めた。

 川畑 3年前の決勝戦を見て粘り強い野球が魅力的で「ここでやりたい」と思いました。

 14年夏の埼玉大会決勝戦。春日部共栄は兄3人の母校・市川越を7-2で破り9年ぶり5度目の優勝を果たした。その時の強烈な印象が末っ子の運命を決めた。

 スタンドでは父典之さん(52)と1番上の兄雅裕さんが応援。兄は「もの静かで口数は少ないけど頑固で負けず嫌いな子です。保育園のころから僕らがバットを振るのを見てまねをしていました。4人兄弟だし存在感を示すにはバットを振って野球をするしかないと思ったのでしょう」と話した。

 川畑は「1球1球、集中して粘り強く、泥くさく戦っていきたい」と静かだがはっきりとした口調で話した。兄3人が果たせなかった夢の甲子園へ、末っ子があと2勝に迫った。【福田豊】