ハマっ子、不思議な子軍団だ。石巻工(宮城)が仙台二に4-3で逆転サヨナラ勝ちした。1点ビハインドの9回2死走者なしから四球、敵失で同点とし、7番植木貴之内野手(2年)が中前にサヨナラ打を放った。3回にも1安打で2得点し、わずか2安打のミラクル勝利。準優勝した05年以来、12年ぶりに準々決勝に進出した。

 ドラマは9回2死からだった。5番戸島瑠威外野手(3年)が四球を選ぶ。6番阿部太一捕手(3年)は引っかけて三ゴロ。しかし三塁手が一塁に悪送球し、戸島が一気に本塁を突いて同点。沸くベンチ。なおも2死二塁で植木が中前サヨナラ打を放った。

 「今日はミスばっかりで、何としてもかえさなきゃと思っていた。真ん中低めの直球を気持ちで打ちました」。植木が気迫で打てば、戸島は「簡単な練習をしてきたわけではないので、こんなところで終わってられない。打てなくても、何かしらで出なきゃと思っていた」と意地を強調した。

 3回の2得点も安打は1本だけ。利根川直弥監督(45)はスコアボードを見ながら「R(=得点)だけ勝っている」と選手に伝えていた。しかも守っては4失策で、3つは失点に結びついた。「不思議なチーム。ハマっ子だから狩猟民族。狩りに行っている」と振り返った。

 4月に就任以降、不思議な力を感じてきた。春の県大会・仙台育英戦では、エース森勇樹(3年)が力投して0-2と健闘。「王者にもひるまない」(同監督)という森が、仙台育英打線を抑えてほえるたびに、球場との一体感が生まれたという。「あの子が引き出しているのかも」と分析してみせた。

 この日被安打10、135球完投の森は「2死から四球とエラーとヒットで勝てたのが、野球の面白いところ。2安打で勝てたのが野球の面白いところ」と熱く語った。24日の3回戦では、雨の影響で開始が約4時間遅れ、初体験のナイトゲームを12-7で制した。「(このチームは)いろいろ持っている」と同監督。不思議な現象とともに、快進撃はまだ続きそうだ。【秋吉裕介】