「決闘」を逆転した仙台育英が優勝を飾り、2年ぶり26度目の甲子園切符を手にした。延長15回引き分け再試合となった準決勝から3連戦。佐々木順一朗監督(57)は、決勝を決闘と表現し、選手に伝えて鼓舞した。1点を追う2回に3点を奪い、その後も着実に加点した。エース左腕長谷川拓帆(3年)は今夏初完投で、東北に7-2と快勝し、全国49代表校の大トリとなった。全国高校野球選手権は7日に開幕し、4日に組み合わせ抽選会が行われる。

 どんでん返しのドラマは、もちろんハッピーエンドだった。球運を味方にした仙台育英が春夏連続で甲子園の土を踏む。佐々木監督は「素直にすごくうれしいですね。この子たちは強いなと思った」。“暗示”をかけた選手が最高の結末を引き出したことを、心の底から喜んだ。

 2回表に1点を先制された直後の裏の攻撃。運が向いた。7番前田颯太内野手(3年)の同点打後の9番長谷川の時だ。「三塁ゴロと思った」(長谷川)打球が、内野の芝生と土の切れ目でイレギュラーして左前に転がり、2点が入り込んだ。佐々木監督は「なんてついているんだろう。運が来たな」と感じたという。

 7月30日、東陵との準決勝は延長15回引き分け再試合になった。翌31日に再試合を制した後、佐々木監督は「どんでん返しがあるからドラマは面白い。ドラマをつくれるのはうちだけ」と、東北との名門対決へハッパをかけた。先に決勝に進んだ宿敵とは日程面でハンディがあった。決勝前は「今日はボロボロなんだから。決闘だから」と言葉を変えて再び鼓舞した。普段は喜ばない四球での出塁に、ベンチでは大きな声が響いた。犠打を成功させただけで手をたたいた。球運を引き寄せるほど、選手の雰囲気がガラリと変わった。

 3連戦のハード日程を天候が援護した。試合中の正午の気温は27・9度、風速は5メートル。「晴れたら大変だった」と佐々木監督。5回途中まで雨が降り、スタミナの消耗を防げた。3回の4点目は無死一、二塁から、4番佐川光明外野手(3年)が三塁前へバントした。三塁手が送球の際にボールが滑り一塁へ悪送球。芝生は雨でぬれていた。

 天気を味方に3連投に耐えた長谷川は「試合中は疲労を感じなかった」と明かした。制球に苦しんだ準決勝までとは一転、与四球1と安定して今夏初完投。最後の最後にエースの貫禄を示した。佐々木監督は「点数を取られても、ランナーを出しても落ち着いていた」と褒めた。

 15年夏に仙台育英は準優勝したが、現チームは昨秋の明治神宮大会、今春のセンバツと初戦敗退した。長谷川は「全国で1勝していない。まず1勝して波に乗りたい。無失点を目指してやっていきたい」と思いをはせた。計7試合63イニングを戦い抜いてつかんだ全国最後の代表枠。どこまでもドラマチックな仙台育英が、舞台を甲子園に移す。【久野朗】