済美(愛媛)は、7番橋本圭介捕手(3年)の甲子園球場での大会通算1500号となる逆転3ランなどで10-4で東筑(福岡)を下した。

 済美が10安打10得点の大勝で、愛媛県勢4年ぶりの白星を飾った。主役は逆転3ランの橋本だ。1点を追う5回2死一、三塁。真ん中の直球を左翼席へ運んだ。夏の甲子園通算1500号となり、「うれしい気持ちでいっぱい。(1500号は)自分でいいのかな。いいとこ取りしてしまった感じです」。公式戦2本目の本塁打は、中矢太監督(43)も「びっくりした」と驚く千金弾だった。

 温厚な性格で、今春の県大会では「声が出ていない」とスタメンから外されたこともある。悔しさをバネに声をからす捕手になり、投手を引っ張るようになった。冬の練習では1・1キロの木製バットを1日1000回振り込み、本塁打を打てるパワーをつけてきた。

 「練習は運をためる場所」。橋本が「野球に生きている」と明かすのは、14年9月に67歳で亡くなった上甲正典前監督の教えだ。創部3年で04年の選抜優勝に導いた「上甲イズム」は、当時部長だった中矢監督に引き継がれた。橋本は授業態度などの日常生活から見直し、成長の糧にした。

 甲子園での白星はエース安楽智大(楽天)を擁して3回戦に進出した13年夏以来。14年8月に部内のいじめが発覚した直後に上甲監督が死去。1年間の対外試合禁止処分を受け、現3年生も1年夏まで試合ができなかった。中矢監督は「3年生は試合ができないのに、済美に来てくれた子たち。上甲さんも喜んでくれていると思う」と涙した。主将の八塚投手も「試合ができることは当たり前じゃない」と力を込めた。苦難を乗り越えてつかんだ勝利を上甲前監督にささげ、2回戦に向かう。【中島万季】

 ◆夏の甲子園球場1500号 済美・橋本の本塁打は夏の甲子園球場で区切りの通算1500号。大会通算では1533号だが、このうち33本は甲子園以外の球場で出ている(豊中5、鳴尾15、西宮13)。