86年夏日本一の「中村」が、歴史を変えた「中村」に目を見張った。広陵・中村は初回の初打席でPL学園・清原に追いつき、5回に新記録。天理・中村良二監督(49)は「同じ中村ですけど(広陵の)中村君は本当にすごい。清原さんを超えたんでしょ!? 時代の流れですね」と、本塁打量産の今大会の特色を踏まえた上で「雰囲気があった」と新最強打者を認めた。

 中村に打たれても、試合に勝つ、と臨んだ決戦だった。5回裏。中村に同点弾を打たれた直後の攻撃で、無死一、三塁の絶好機。救援に出てきた相手エース平元の初球に、スクイズを仕掛けたが、中村の好捕に阻まれた。「攻撃も中村君、守備力も中村君、何かことがあれば、中村君。でも他の選手が見劣りするかといえば、決してそうじゃない」。広陵の強さが身に染みた。

 両軍19安打の打撃戦。最後まで食らいついた教え子の粘りは「天理らしい野球」と誇らしかった。今年4月に大西卓也元部長(54)が副部長で復帰。80年夏4強時の名遊撃手・大西にあこがれ、中村監督は天理進学を決めた。選手の心技両面を見てくれる先輩を加えた新指導陣で、昨秋県初戦敗退の後輩を全国4強に育て上げた。「3つも勝ってくれて立派。ナイスゲームでした」。好敵手にぶつかり散ったナインを、ほめて終われた夏になった。【堀まどか】