星稜が、奥川恭伸(2年)の左中間サヨナラ二塁打で23年ぶりの春ベスト8進出を果たした。

 延長10回裏、2死一塁。奥川はネクストバッターズサークルに立った時、サヨナラ打を打つ映像が頭に浮かんだ。「自分が打った打球が野手の間を抜けていく。絶対に自分が決める」。イメージ通りだった。振り抜いた打球は左中間を破り、ランナーがホームイン。ダイヤモンドを回りながらその瞬間を見届けると、涙がこぼれた。「ホッとしました…。厳しい試合だったので…」。中学3年夏、全国中学軟式大会優勝を果たした時以来の勝利の涙だった。

 3点ビハインドの5回途中から、マウンドに上がった。「真っすぐを軸にしたかったけど、対応されているのがわかった。厳しかった。左打者が多かったので、変化球を多く投げた」と振り返る。4回2/3を投げ被安打1も4四死球と制球が乱れた。10回表、死球でランナーを背負うと、「自分はできる。野手が守ってくれるから、安心して投げる」。マウンド上でつぶやきながら、自分を暗示にかけ強い気持ちで後続を断った。

 宇ノ木小学校3年から野球を始めた。当初はバッティングが好きで、宇ノ木中学では野手としてプレーをしようと思ったこともある。大舞台でのサヨナラ打に投打の才能を全国に披露した。

 「最低2勝する」と目標を立てて乗り込んだ選抜。目標をクリアし、「明日も気持ちで頑張りたい」と意気込む。石川県勢初のベスト4入りをかけて三重と戦う。