春季高校野球岩手県大会の組み合わせ抽選会が10日、東北6県の先陣を切って盛岡市内で行われた。同地区予選で盛岡大付を破って第1代表となった盛岡三は、19日の1回戦で大東と対戦する。186センチの長身エース右腕、西舘洸希(3年)は同地区予選で最速を3キロ更新する144キロをたたき出した。今春のセンバツに出場した花巻東には、甲子園のマウンドに上がった弟の勇陽(ゆうひ、2年)がいる。ともに勝ち上がれば決勝で激突する。上位3校が6月7日から青森で開幕する東北大会に出場する。

 186センチの長身エース西舘は、雄大な岩手山をバックに意気込んだ。抽選会後に同校グラウンドで行った練習で黙々とバットを振った。初戦の相手が決まっても、視線の先は夏の頂点に向いていた。

 西舘 夏、勝つためにやっているから、県内では負けられない。たとえ相手が私立勢でも自分たちの力を出せれば、圧倒できる。

 有言実行していた。6日の第1代表決定戦。西舘は昨夏代表の盛岡大付相手に7回から2番手で登板。3回1安打1失点に抑え、5-2で完勝した。「冬にやってきたことは間違ってなかった。それを再確認できた」。大会4戦中、2試合で5回2/3を投げ、許した安打は1本だけ。盛岡工との準決勝では最速を3キロ更新する144キロをマークした。

 冬の間の投球フォーム固めが実った。昨夏の甲子園優勝校、花咲徳栄(埼玉)の投球指導のDVDを見て得たヒントを即実行した。「体をムチのようにしならせる。右肩甲骨が捕手に完全に見えるようにして、リリースも右目の前で離すようにフォームを何度も確認した」。従来は高めしか球速が出なかったが、今春は「低めにも伸びのある球が行くようになった」。直球の平均球速が130キロ後半から140キロ台に乗り、投球が安定した。

 昨秋の県大会では弟のいる花巻東に初戦負けした。その後、勝ち上がった勇陽はセンバツに出場し、マウンドにも上がった。それでも兄の威厳からか「刺激にはなったけど、弟とは連絡を取ってもいないし、意識もしない」と言い放つ。あくまで打倒私立からの夏優勝しか考えていない。「公立が甲子園に出ると、岩手も活気づく。自分たちは例年より力もあるし、経験もある」。94年の盛岡四を最後に、夏の代表は私立勢に独占されている。夏に優勝するためにも、春から暴れてみせる。【高橋洋平】