<高校野球南埼玉大会:埼玉栄6-2細田学園>◇11日◇2回戦◇さいたま市営大宮球場

 高校野球100回大会の日刊スポーツ「編成部長」を務める前ロッテのサブロー氏(42)が11日、さいたま市でプロ注目の埼玉栄・米倉貫太投手(3年)を視察した。「直球の質」で投手を大きく2つのタイプに分類する独自の視点で、将来性をチェックする。

 真夏の暑さの中、米倉投手は12三振で完投した。タフでピッチャーらしいピッチャー。9回に一番いいボールを投げていた。マウンドでの立ち姿もいい。序盤はスライダーも抜けたボールが多かったが、終盤は切れが出てきた。3ボールの場面が13回と制球に苦しんだが、ストライク先行で攻められれば、もっと楽に抑えることができるだろう。

 私は打者出身なので、投手の技術面ではなく、打者目線で投手のタイプを考えていきたい。直球にスポットを当てれば、大きく2つのタイプに分かれる。

 ★ポップ型

 伸びる球。直球のスピン量が多く、「ボールの切れ」がある。浮き上がるような高めの直球で空振りが取れるタイプ。打者はボールの下側を打つケースが多くなり、フライが多くなる。プロでいえば楽天岸や則本らが当てはまる。

 ★タレ型

 伸びずに落ちて見える球。「落ちる」と聞くとネガティブに聞こえるかもしれないがそうではない。直球でゴロアウトを多く取るタイプ。打者はボールの上っ面を打つケースが増え、長打が出にくい。エンゼルス大谷は「球速のあるタレ型」に分類される。

 米倉投手の直球は「ポップ型」に当てはまる。直球と縦気味に変化するスライダーの相関関係がいいから三振が取れるのだろう。12三振中、8個はスライダー中心の変化球で奪った。

 そしてもう1点。「ピッチトンネル」をポイントに挙げたい。投手が投げるボールの軌道を思い浮かべてほしい。マウンドからのボールが打席に届くまでの間に、打者はバットを振るか振らないかを瞬時に判断する。打者が最終判断する位置が「ピッチトンネル」で、18・44メートルの中央付近になる。投手にとってはこの位置で変化球がどう変化するかがカギ。例えば変化が少し投手よりから始まれば、打者にとっては見極めやすいボールになる。

 投手のリリースから、同じ軌道で来たボールが「ピッチトンネル」で変化するか。米倉投手のスライダーは、落ち始める位置がいいから空振りが取れるのだろう。直球の質など、自分のタイプを知ることで打者への攻め方も変わってくる。プロで活躍するまでには時間がかかりそうだが、将来楽しみな選手だ。