南福岡では公立校の香椎が初の甲子園まであと2とした。昨年秋、今年春と2度負けた久留米商相手に壮絶な打撃戦の末に打ち勝ってリベンジに成功した。記念大会の南福岡大会とはいえ、唯一残った公立校が創部初の4強。無印軍団が暑い夏の主役となる。

 まさにノーガードの打ち合いを気合で制した。香椎ナインの強い気持ちが、それぞれのバットに乗り移った。昨年秋、今年春に敗れた宿敵・久留米商相手に10点を奪われたが、13点を奪ってみせた。1回に3点を先制されても、その裏になんと7得点。杉野弘英監督(42)も「誰がどう打つか、みんな分かっている。慌てることはないよと言った。でも7点はビックリですよね」と目を丸くした。一時はコールド勝ち寸前まで追い込みながら、反撃に合ったが14安打で蹴散らした。

 主将の村上拓巳内野手(3年)は「10点取られても大丈夫と言っていた。打線は自信があった」と胸を張った。打撃練習よりも「素振りを多くして調整させたのが良かった」と杉野監督も今夏の直前調整がうまくいっていることを勝因に挙げた。

 公立校としての「意地」もある。毎年福岡の公立校だけで行われる公立校大会で今年は準優勝。「指導者も選手も切磋琢磨(せっさたくま)している。そのなかで成長させてもらってます」と杉野監督も手応えを口にした。

 ベンチには「アツオ」もいた。背番号10の松田寛壱は、監督の横で攻撃の時も守りの時も声をからして指示を出している。杉野監督も「私の右腕です」と信頼。伝令でも「お前の笑顔でピンチを救ってこいと言うんです」。松田も「第2の監督ではないですが、自分の声で勝利に導くように頑張ってます」とソフトバンク松田のようにムードメーカーに全力を注いだ。この日1番打者で夏初スタメンに起用された竹浦一馬外野手(2年)は「ソフトバンクの中村晃選手のフォームをまねています」と2本の三塁打で2打点を挙げた。

 100回記念大会の南福岡でつかんだ初のベスト4。「この年代に生まれたことを奇跡と思って、自分たちのものにしようと言っている」(杉野監督)。初の甲子園まであと2勝だ。【浦田由紀夫】