サヨナラ負けしてマウンドに倒れ込んだ昨夏のエースではなかった。帝京(東東京)の松沢海渡投手(3年)が1年後に大きく「変身」して8強を決めた。9回、最後の打者を遊ゴロに仕留めると、笑顔でマウンドを下りた。「低めに集めて、力じゃなく打たせて取ることができました」。

 今大会の初登板だった。相手は昨夏の準々決勝で敗れた東海大高輪台。延長10回1死一、二塁でサヨナラ打を浴びた。前日、部室で憎き相手のビデオを見た。「去年の試合と、今年の4回戦です。去年のメンバーもいるんで」。東海大高輪台で昨年から4番を打つ伊東翼三塁手(3年)は無安打に抑え込んだ。

 昨年の松沢とは投球フォームも違った。上手投げを横手に変えた。今春からコーチとして母校に復帰したセンバツ準優勝投手の芝草宇宙氏(48=元日本ハム)に指導を受けての改造だった。「ナチュラルにシュートしていたんで。横中心に上からも投げます」。

 1回は昨夏同様、力で抑えようとして4安打され、3点を失った。「去年の尾を引いてるぞ」。前田三夫監督(69)のこんな指摘もあって修正できた。「三振より打たせてとる方が球数も少なくなりますから」。105球の完投勝利。エースが苦い思い出を自ら消して、帝京に甲子園取りの態勢が整った。【米谷輝昭】