第100回全国高校野球選手権記念大会は、第5日の1回戦4試合が行われる予定で、松坂大輔投手(現中日)を擁し98年に春夏連覇を達成した横浜(南神奈川)が第1試合に、島袋洋奨投手(現ソフトバンク)を擁し2010年に春夏全国制覇した興南(沖縄)が第4試合登場する。また、大阪桐蔭に過去勝った経験のある愛知産大三河(東愛知)と創成館(長崎)も初陣。

 元球児による「レジェンド始球式」は岡山東商OBの平松政次氏が務める。1965年のセンバツ大会では優勝の立役者となった。大洋ホエールズ(現DeNA)に入団後、1970年には25勝を挙げ最多勝と沢村賞を獲得するなど「カミソリシュート」を武器にプロ通算201勝(196敗)で、名球会入りした。

 

<見どころ>

▽1回戦

【第1試合(8:00) 横浜(南神奈川)-愛知産大三河(東愛知)】

 3年連続18度目の出場となった横浜が、20年ぶり3度目の夏制覇を狙う。夏は、愛甲猛投手を擁し1980年(第62回大会)に初の全国制覇、98年に春のセンバツを制して臨んだ夏、松坂投手が決勝戦(京都成章)で無安打投球、夏2度目の優勝を春夏連覇で飾った。今大会も投打ともに高いレベルでまとまっており、優勝候補の一角だ。

 南神奈川大会では全6試合で毎試合2桁安打を記録。計77安打で55得点(1試合平均9・2点)、チーム打率3割7部4厘をマークした。3番斉藤主将、4番万波、9番遠藤は打率5割超と好調、斉藤と万波はいずれも2桁打点で勝負強さも際立った。1年生ながら代打の切り札・度会も打率7割超(9打数7安打)と好調だ。強力打線に加え、盗塁数22と機動力も武器。2番山崎(6盗塁)9番遠藤(6盗塁)は抜けた存在で、上位下位とムラなくつながる打線は相手にとって脅威となる。

 6投手で乗り切った投手陣は板川、及川の両左腕が軸。黒須、万波らリリーフ陣も控えている。スライダー、チェンジアップのキレ味鋭い板川は5試合登板で20回3分の2を投げ、被安打17、6失点、与四死球3、25奪三振と抜群の制球力が光る。また最速150キロ超の本格派及川は4試合登板で13回3分の1を投げ、被安打9、6失点、与四死球4、18奪三振。両左腕ともに投球回を上回る三振を奪っており、ハマれば奪三振ショーも。

 22年ぶり2度目の出場となった愛知産大三河は、6月の招待試合で大阪桐蔭に6-5で競り勝った実力校だ。初出場となった1996年(第78回大会)は1回戦で高陽東に2-3で1点差負け。2000年に初出場したセンバツ大会でも作新学院に3-5で惜敗。春夏通じて「3度目の正直」で甲子園初勝利を目指す。

 東愛知大会は、6試合を松原、上田の2投手で乗り切り、6失点(1試合平均1失点)と安定感は抜群。エース松原は5試合登板で37イニングを投げ被安打25、7与四死球、4失点。桜井監督の長男仁生捕手(よしき)が巧みにリードする。

 チーム打率3割9分9厘の強力打線は、6試合で計48得点をたたき出した。4番上田は打率5割6分5厘、15打点で中心的存在。ほかにも7番佐々木は5割5分6厘、3番長谷も5割をマークしており、打線をけん引する。

◆横浜のおもなOB 中日松坂大輔、DeNA筒香嘉智

◆愛知産大三河のおもなOB 元中日原田政彦、ロンドン五輪銅メダリスト蟹江美貴(アーチェリー団体)

 

【第2試合(10:30) 花巻東(岩手)-下関国際(山口)】

 3年ぶり9度目の出場の花巻東が、過去2度跳ね返された準決勝を突破し一気に頂点を狙う。菊池雄星投手(現西武)を擁し2009年に夏4強、2013年の夏もベスト4入りしたがいずれも決勝進出はならなかった。(ちなみに2011年に出場した同校OB大谷翔平投手(現エンゼルス)は2年の夏に初戦敗退)。

 今春センバツでは8強入りしており「4強の雄星超え」にも期待がかかる。岩手大会は全6試合中3試合が1点差。決勝では盛岡大付に土壇場9回に試合をひっくり返した。チーム打率は3割6分9厘で、5割4分5厘の打率を誇る3番田中のバットに期待。犠打、盗塁ともに17個ずつと小技、機動力も高いレベルでソツのない攻撃を見せる。

 投手陣はエース伊藤が軸だが、試合展開次第では継投も十分考えられる。菊池や大谷も背負った同校の“出世番号”17番は最速142キロの西館(2年生)が背負う。

 今春のセンバツでは準々決勝で大阪桐蔭に0-19と大敗した。春の悔しさを糧に、まずは初戦突破で岩手県勢夏通算40勝目をつかむ。

 2年連続2度目の出場となる下関国際は、春夏通じて甲子園初勝利を目指す。昨夏から3季連続で甲子園に出場。原動力は山口大会で4番でエースの鶴田だ。最速147キロの速球を武器に5試合全てに登板。39イニング中33イニングを投げきり、被安打19、27奪三振、6与四死球、5失点と制球力が安定している。打っては同大会で打率5割2分4厘。準決勝と決勝で本塁打を放つなど勝負強さは半端ない。

 チーム打率は3割2分4厘。1番浜松主将がチャンスをつくり、4番鶴田、5番吉村で返す得点シーンが見られるか。吉村は昨夏の甲子園で本塁打を放つなど経験も豊富。勝てば山口県勢3年ぶりの夏勝利となる。

◆花巻東のおもなOB 西武菊池雄星、エンゼルス大谷翔平

◆下関国際のおもなOB ロッテ宮崎敦次

 

【第3試合(13:00) 創志学園(岡山)-創成館(長崎)】

 2年ぶり2度目の出場の創志学園は、明徳義塾の名将・馬淵史郎監督が「打倒大阪桐蔭」の1番手に挙げた実力校でもあり、投打に高いレベルでまとまっている。

 2年生エース西は、身長184センチの恵まれた体格から投げおろす最速150キロの剛速球の威力は十分。岡山大会は28イニングを投げ33奪三振、4失点。U18日本代表の1次候補にも名を連ねる本格派投手だ。

 打線も4番、5番、6番がポイントゲッターだ。4番金山は岡山大会で打率6割3分2厘(19打数12安打12打点)。5試合連発の5本塁打でチームトップの12打点をたたき出した。続く5番金谷主将は打率7割、6番中山も長打力があり2本塁打を放った。7月の西日本豪雨の影響で参加56校で最後に代表校に名乗りを挙げた。夏初勝利で被災者に勇気と元気を届ける。

 3年ぶり2度目の出場となった創成館は目標の「日本一」を目指す。昨秋の神宮大会の準決勝では、大阪桐蔭を破った実力校。今春センバツでも8強入りし、準優勝の智弁和歌山に延長10回で惜しくも競り負けた。投手陣は185センチ左腕の川原は140キロ超の速球とスライダーが武器。春の九州大会で背番号1を背負った戸田も長崎大会で13イニングで16三振を奪うなど、投手陣の層も厚く継投もある。

 5試合で27得点、チーム打率2割8分8厘と数字は高くないが、5試合3失点の盤石の投手陣と失策1の強固なディフェンスで守りからリズムを作る。長崎県勢は夏4強が最高。秋に大阪桐蔭を倒した創成館が、まずは3年ぶりの夏1勝を狙う。

◆創志学園のおもなOB 巨人高田萌生、日本ハム難波侑平

◆創成館のおもなOB 格闘家・広田瑞人、漫画家・鬼頭えん

 

 

【第4試合(15:30) 興南(沖縄)-土浦日大(茨城)】

 2010年に春夏連覇した興南が2年連続12度目の聖地で、初戦を突破し沖縄県勢夏70勝を目指す。昨夏、スーパー1年生だった宮城と根路銘(ねろめ)は智弁和歌山に初戦で敗れ、悔し涙。2人はひと冬超えて着実に成長した。宮城は決勝の糸満戦で無四球、被安打2の完封勝利。根路銘は打率4割3分5厘とリードオフマンの役割を果たした。3年生の4番塚本はチームトップの打率4割5分8厘、1本塁打、7打点と勝負強い打撃がウリ。宮城と2枚看板の藤木は4試合に登板し21回3分の2を投げ5失点、20奪三振。沖縄大会6試合で6失点(1試合平均1失点)、投手を中心とした守りから勝機をつかむ。

 2年連続4度目出場の土浦日大が、1986年(第68回大会)以来、32年ぶりの夏1勝を目指す。小菅監督は取手二時代に木内幸男元監督とともに1984年の夏にPL学園の桑田、清原の「K・Kコンビ」を破って全国制覇した。木内イズムを継承する強力打線は健在でチーム打率3割8分8厘、なかでも茨城大会で打率5割1分9厘、3本塁打、9打点のチーム3冠王・1番鈴木主将がけん引する。レギュラークラスで投手を除き8人が打率3割超と打線に抜け目はない。

 守ってはエース富田と左腕の荒井が投手陣の中心的存在で投手4人で6試合11失点とブルペンは安定感抜群だ。

◆興南のおもなOB ソフトバンク島袋洋奨、ボクシング元世界王者・具志堅用高

◆土浦日大のおもなOB 元阪神工藤一彦、元横浜小山田保裕