シーズンオフ企画の「高校野球NOW」の第2回は、女性審判員の佐藤加奈さん(32)にスポットを当てました。阪神大学野球リーグで審判を務め、今夏には「高校野球デビュー」。女子野球アジア杯、ワールドカップ(W杯)でも審判を務めるなど活躍の場を広げる佐藤さんが、これまでの挑戦、今後の目標について語ってくれました。

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今夏、万博球場で1人の女性審判員が「高校野球デビュー」した。7月8日の北大阪大会1回戦(金光大阪-牧野)。大阪大会初の女性審判は、17年春から阪神大学野球リーグで審判を務めていた佐藤加奈さんだった。「夏は特に引退がかかった試合なので、試合終了の時は、泣いている子とかを見ると、ちょっと感極まるものがありますね」。誰が見ても分かりやすい動きを心がける佐藤さん。際どいプレーには「アウト!」と何度もジェスチャーし、「セーフ」の時も伸ばした腕を最後まで残すように意識している。

審判を始めたのは7年前だ。中学校の野球部顧問になったのがきっかけ。当初はルールも詳しく知らなかった。「アウト」のジェスチャーで親指を立てたり、二塁塁審の時には座ってジャッジしたり…。実はもともと乗り気ではなかったのだが、転機は5年前。転任先の中学校の野球部生徒から熱心に技術指導を求められた。「審判目線でルールを通してだったら、教えてあげられるかな、と」。京セラドーム大阪や甲子園を訪れ、勉強を重ねるうちに、佐藤さんの考えも変わっていく。「大人になるといろんな事を学ぶことが少なくなっていくので、出来ないことが出来るようになるというのが、すごく楽しいなって思いました」。

日体大で野球を始めた時も、何も知らないところからだった。未経験だったが「一緒に日本一になりませんか」のチラシを見て入部を即決。外野手になったのは、元阪神金本知憲氏の大ファンだったから。金本モデルのグラブを使用し、背番号も「6」を選択するほど好きだった。2年時にベンチ入りし、3年時は守備固めで出場。最終学年でレギュラーを勝ち取り、全日本7連覇に貢献。努力を重ね、少しずつ出来ることを増やしていった。

17年秋には女子野球アジア杯(香港)で審判を務め、今夏には女子野球W杯(米国)にも参加。「試合に臨む時は『Enjoy baseball!』と声をかけて、ノリノリで。野球を楽しもう! という感じでした」。同W杯で女性審判は17人中14人。ベネズエラやメキシコではプロリーグでも審判を務める女性、審判の講師を仕事にする女性もいたという。

世界との差を感じてきた佐藤さんの今の夢は「将来は審判に」と考える野球少女を増やすこと。さまざまな大会に立ち、存在を知ってもらうことが、アピールにつながると考える。

「自分が甲子園に立ちたいのもありますが、そういうところで活躍することも、今後の女子野球の発展につながるのかな、と。初の甲子園女性審判という、その野望はあります」

挑戦は、まだまだ続く。【磯綾乃】

◆佐藤加奈(さとう・かな)1986年(昭61)10月2日、大阪市生まれ。小学校から高校までバスケットボールを続け、日体大では軟式野球部に所属。4年時にはレギュラーとして全日本大学女子野球選手権の7連覇に貢献した。17年春から阪神大学野球リーグで審判。現在は大阪市内の中学校でバドミントン部の顧問を務める。体育教諭。