センバツの主役候補が進化の兆しを示した。星稜(石川)・奥川恭伸投手(2年)が10日、光泉(滋賀)との練習試合に先発し、2日連続で好投。3回無失点で初の連投を快調に終えた。この日は148キロを出し、自己最速の150キロ超えを視界にとらえたが、球速よりも「勝てる投手」への脱皮を目指している。

   ◇   ◇   ◇   

自校グラウンドに光泉を迎えた一戦で、奥川の腕の振りは鋭さを増した。初回に高めの直球で空振り三振を奪うなど、前日と同じ3回を投げ、2安打無失点。得意のスライダーも2球だけ解禁し、危なげなく2日連続の登板を終えた。

「昨日より指のかかりが良く、直球はずっと良かった。感触は悪くない」。連投テストを問題なく済ませ、今週末には7回以上までイニングを伸ばす予定にしている。開幕まで2週間を切って、点検項目を着実にクリアしている。

NPB2球団が視察。スピードガンで148キロを確認したヤクルト阿部スカウトによると、球速が出にくい機材だったといい「普通のガンなら150は出ていた」と直球の威力を認めた。9日に横浜・及川が151キロを出したことに「すごい」と感心した奥川も球速への興味はある。好投手の分かりやすい指標の1つが「球速」であるのは間違いないが、奥川は「それだけ(148キロ)出ていれば十分。もう少し出る感覚はあるけど、無理はしません。球速で競うのではなく、しっかり『ピッチング』ができるようにしたい。早くピッチングがしたいです」ときっぱり。チームを勝たせるための投球を極めようとしている。

数少ない課題だった一塁けん制もふんだんに試した。鋭く反転して正確に投げ「克服できていると感じた」。強肩の山瀬慎之助捕手(2年)とのバッテリーはますます堅固になる。林和成監督(43)は「けん制、フィールディングなど投げるだけじゃないところを課題を持って良くできていた」と頼もしげだ。

成長の余地を残す北陸の怪物。勝つために必要なパーツを身につけて、甲子園に乗り込む。【柏原誠】

○…星稜は奥川と小学校からバッテリーを組む、ドラフト候補の山瀬が大爆発した。2試合で10打数8安打。昨秋苦しめられた右手痛も「もう問題ありません」と治り、昨年のセンバツで5番を打った打撃がよみがえった。二盗阻止や一塁けん制刺も披露した。

○…光泉(滋賀)のプロ注目右腕、吉田力聖(りき)投手(2年)は奥川に刺激を受けた。最速144キロで、この日の最速は141キロ。4回で6点を失ったが「この時期にしては上出来。球自体は悪くなかった」。試合後は奥川と一緒にトレーニング。球種によってのクセも指摘されたという。「今日は吸収できるものを吸収したかった。自分もああいう投球を夏までにしたい」とうれしそうに話した。