小千谷が、昨秋4強のシード校・関根学園に金星を挙げた。もくろみ通りにロースコアの展開に持ち込み、3-2の接戦を制した。エース笠井拓海投手(3年)が強力打線を9回、6安打の2失点(自責1)に抑えた。

最後の3アウトを奪うまでの時間を、マウンドの笠井投手は「長かった」と感じていた。相手は昨秋4強の関根学園。大物食いを果たして勝利の瞬間を迎える前が、最大のピンチになった。3-1で迎えた9回は四球と左前打で無死一、二塁。「野球をやってきた中で一番、緊張した」と、心臓の鼓動を高鳴らせて投げた。犠打で1死二、三塁とされ、最後の打者は代打・吉原玲皇主将(3年)には暴投。1点を失い、同点の走者がまだ三塁にいた。

そんな危機に見舞われた笠井投手の頭の中は、意外と冷静だった。「スクイズもあると、警戒していた。制球には気をつけた」と言う。予測通りに相手はカウント3-2からスリーバントスクイズ。ふわりと正面に浮いた球を捕球すると、三塁に送球して併殺を完成させた。長く感じた最終回は、これ以上ない幕切れ。試合時間は2時間ジャストだった。

中林靖監督(49)は9回の場面を振り返る。「(投手)交代を含めていろいろ考えた。しかし、アイツ(笠井投手)を信じるしかない、と腹をくくった」。というのは、笠井投手は関根学園戦を見据えたコンディション作りをしていた。8-5で勝った前日28日の高田農商(連合)戦では、2日間の連投に備えて4回を投げてベンチに下がった。そして、この日は9回、114球の粘投だ。180センチ、57キロのスリムな体で直球の最速は124キロ。ところが、リリースポイントを前に置くフォームから繰り出す直球の体感速度は実際より速い。「外角の直球でカウントを取れた」。笠井投手は生真面目な顔を作って話していた。【涌井幹雄】