藤蔭が連覇し、今年1月に脳梗塞で倒れた原秀登前監督(46)に吉報を届けた。7回から2番手で登板した左腕の高田大樹投手(2年)は「1球1球に気持ちを込めました」と、チームを代弁する思いで3回2安打無失点。5-1の9回2死一、二塁、武器のカーブで最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、雄たけびを上げ左手を突き上げた。

打線も、2月に就任した竹下大雅監督(26)が「主導権を握り、初回から攻め続ける試合運びができた」という10安打5得点。準決勝でセンバツ4強の明豊撃破で波に乗る大分商を気迫で上回った。

試練を乗り越えた。原監督が病に倒れ、急きょ竹下監督が部長から昇格した。若い監督ゆえの不安もあったが、校長も務める石井潔副部長(67)が理事長に「悩んだが、私が後ろから全力でバックアップするのでとにかくやらせて下さい」と嘆願したという。

甲子園メンバー4人が残ったが、昨秋から結果が出ずノーシードで迎えた夏だった。だが佐賀学園3年で夏甲子園出場の経験がある竹下監督が「昨夏優勝で重圧がなかったかというとうそになるが、挑戦者としてやるしかないと選手に伝えた」と言い、逆境もバネに一丸となった。準々決勝開始前には、リハビリ中だった原前監督がつえをつき訪れ「あと3つ頑張れ」とハッパをかけられた。選手は、苦労しながら懸命に話すその姿に奮い立った。

28年ぶりだった昨夏甲子園は、開幕試合で星稜(石川)に完敗。過去3度の甲子園挑戦はすべて1回戦敗退しており、高田は「甲子園も原監督や支えてくれた周囲のために投げたい」。前指揮官のためにも、甲子園初勝利を目指す。【菊川光一】

◆藤蔭 1950年(昭25)日田高等経理学校として創立の私立校。日田商業高を経て60年に現校名に。普通科、情報経済科に358人(女子160人)が学ぶ。野球部は81年創部で部員80人。甲子園出場は春1回、夏は3回目。主な卒業生は、広島一岡竜司、元中日森章剛ら。所在地は大分県日田市田島本町5の41。石井潔校長。