冷静沈着、動じないはずのエースが乱れた。前橋育英(群馬)の右腕・梶塚彪雅投手(3年)は「打たれてからは、全然分からなくなってしまった」と大粒の涙を落とした。

6回まで3失点。打たれながらも、しのいできた。7回も2死を奪い終盤へ…というところから国学院久我山打線に5連打を浴び、5-6とこの日初めて逆転された。「自分の投球の甘さが出た」。ストライクゾーンにそろえた球を、次々と狙われた。

群馬大会では40イニングを投げ、1つも四球を許さなかった(死球は5個)。この日も初回2死一、三塁のピンチ。5番打者に3ボールとしたが、そこからカットボールでストライクを2球続け、最後は直球で空振り三振にとる技術の高さを見せた。

投球練習ではいつも、カウント3ボールのつもりで取り組む。「コントロールが狂うときはだいたい腕の位置がおかしいので、すぐチェックします」。自分の“取説”も脳内で駆使しながら、打者に向かっていく。この夏は結局、47回で与えた四球は0。圧倒的な数字だった。

彪雅(ひょうが)の名の由来は「氷河」。国内屈指の暑さを誇る群馬・伊勢崎で、その名のように冷静で動じない投手として育ってきたものの、やっぱり暑さは苦手。「甲子園が終わって引退したら、山の方にある友達の家に遊びに行こうと思ってるんです」と話していた。でも、もっと甲子園にいたかった。夏休みの訪れは早すぎた。【金子真仁】