新型コロナウイルス感染拡大は球児の進路にも影響を及ぼしている。安中総合学園(群馬)のプロ注目右腕、清水惇投手(3年)は「高校卒業してプロに行きたいと思っていたけど、今は大学に進学して4年後にプロ入りという気持ちの方が強い。焦る必要もないのかな」と電話取材で率直な心境を語った。

中学時代はU15日本代表に選ばれた経歴を持つ。甲子園常連校の誘いを断り、地元の公立校に進んだ。昨秋の県大会3回戦で桐生第一に敗れるも、その後急成長。オフ期間までの練習試合で70イニングに登板し、自責点は1のみだった。冬は体作りに励み、昨年時点で最速142キロだった球速が増した手応えもブルペンで感じていた。今年の飛躍が期待されている好投手。しかし、その成果を確かめることも、打者相手に力試しする場もない。「春と夏でアピールしてプロの目に留まればと思っていた。夏の大会がなければ、厳しい部分もある」と自分を見つめた。

全体練習は2月下旬から行えず、学校は5月末まで休校。高校最後の年に取り巻かれた緊急事態にも「万が一球児が感染してしまったら大会どころではない。今できることをしっかりやらないと」と懸命に前を向く。日中は勉強に励み、夕方から自宅で体を動かす毎日だ。オリックス山岡がInstagramで紹介しているトレーニング動画を参考にしたりと、試行錯誤しながら練習に励む。瞬発系のトレーニングが主で、硬球を投げる機会はほとんどない。だからこそ春季大会の中止も「練習すらできないからしょうがない」とすんなり受け入れられた。

高校総体が中止となり、部活動が終了してしまったクラスメートも多く「気持ちを聞くに聞けない」ととまどいを見せる。夏の選手権開催可否の結論は出ていない。公式戦で投げたいという気持ちは強いが「開催が決まって『なんで野球だけ』ってなるのはよくないのかな」と苦悩を抱える。

それでも最後の夏に懸ける思いは強く、プロ入りも諦めたわけではない。内角を突き、スライダーで空振りを奪う、強気な投球が持ち味。一冬明け、ブレークの兆しが見える。「まだ高校で実績を作れていない。進化した姿を見せたい」と意気込んだ。のびしろ抜群の17歳。舞台が整えば、群馬の高校野球に旋風を巻き起こす準備はできている。【湯本勝大】

◆清水惇(しみず・じゅん)2002年(平14)7月21日生まれ。群馬県高崎市出身。長野小1年時に長野イーグルスで野球を始め、投手。長野郷中では軟式野球部に所属し、U15日本代表に選出。安中総合学園では1年春からベンチ入り。170センチ、70キロ。右投げ右打ち。