第102回全国高校野球選手権大会の中止を受けて20日、磐城(福島)渡辺純監督(38)がいわき市内の同校で報道陣に対応した。21世紀枠で46年ぶりの出場を決めていたセンバツに続き、夢の舞台がなくなった。「こういう社会情勢ですから覚悟はしていましたが…。今まで当たり前に野球がある生活を送ってきた。非常にショックです」と重く受け止めた。

夕方、他の部員に先駆けて岩間涼星主将(3年)に電話で告げた。いずれもOBで4月に転勤した木村前監督と大場前部長、定年を迎えた阿部前校長を、夏の聖地に連れて行くと切り替えたばかりだった。もう、目指すこともできない。岩間は涙声になりながら「甲子園だけが全てじゃない。ここまでやってきたこと、体験したことが必ず糧になる」と、悔しさをこらえて前を向いていたという。

東日本大震災や、昨秋の台風被害を乗り越えてきた。渡辺監督は「いろんなつらい思いをしている。でも一緒にいて悲愴(ひそう)感なく、本当に前向きで切り替えるのが上手な、たくましい生徒たち」と誇りに思う。新入生も選手10人、マネジャー2人が加入した。だが春季大会が消え、甲子園が消えた。3年生は公式戦でコバルトブルーのユニホームを着られないまま、高校野球を終える可能性もある。

現在は休校で部活動も休止中。部活の再開は早くて6月2週目になる見込みだ。「高校生のころは甲子園が総決算で、あの時点での、生きてきた中のゴールだった。何もないでは踏ん切りがつかない。7、8月の土日で県大会のようなものができないか。やり切ったと思える花道を用意してあげたい。引退まで彼らと一緒に野球がしたい」と思いやった。【鎌田良美】