失われた舞台が特別な形で戻ってきた。日本高野連が「2020年甲子園高校野球交流試合」の開催を10日に発表し、北海道からセンバツに出場予定だった帯広農と白樺学園の2校が、招待校に選ばれた。新型コロナウイルス感染拡大を受け、センバツ、春季大会さらに夏の甲子園は中止となったが、予想もしなかった“逆転”甲子園切符が、2校の元に届けられた。

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驚いた。センバツに21世紀枠で出場予定だった帯広農は午後4時から同校グラウンドで練習。午後5時過ぎに、大久保聡彦部長(57)から初めて報告を受けた。主将でエースの井村塁(3年)は「いろんなことが起きすぎて、どういうことか最初は、よく分からなかった。想定外でびっくり。少しずつうれしさがこみあげてきた」と笑顔で話した。

1日から全体練習を再開。北海道高野連の独自大会へ気持ちを高ぶらせていた中での、さらに大きなサプライズ。打撃のキーマンである水上流暢右翼手(3年)は「甲子園は僕らの目標。最近、練習中の声もすこし小さいかなと思っていたが、きょうは前みたいにみんなよく出るようになった」と効果を口にした。

コロナ禍で状況は二転三転し、その度に気持ちが揺さぶられた。3月11日にセンバツ中止が決定。夏に切り替えようと4月8日に全体練習再開も16日から再度練習自粛となり、5月20日には夏の大会も中止となった。9月に就職試験を控える部員もおり「甲子園がないなら勉強に集中したい」という声もあった。チーム内に温度差が出ていた中での吉報だった。

大きな目標ができ、もう1度チームの士気を高めることが出来る。井村は「また引き締めて部員50人が1本の矢になってぶつかっていけるように」と決意を新たにした。20日に練習試合も解禁となり、帯広柏葉、帯広工と今年初の対外試合を予定。28日には同じく甲子園に招待された白樺学園とも対戦する。前田康晴監督(44)は「奇跡に近い。技術も体力もまだ戻っていないが、センバツのときの気持ちを思い出させたい」。熱い聖地での夏に向け、スイッチを入れなおす。【永野高輔】

◆道高校野球の今季経過

▼1月24日 センバツ出場32校が決定

▼2月28日 鈴木道知事が緊急事態宣言

▼3月11日 日本高野連がセンバツ中止を決定

▼4月3日 北海道高野連が春季全道大会中止と地区大会の延期を発表

▼4月12日 鈴木知事と秋元札幌市長が緊急共同宣言

▼4月17日 道高野連が春季地区大会の中止を発表

▼5月20日 日本高野連が夏の全国選手権、南北北海道大会、地区大会すべての中止を発表

▼6月1日 帯広農が全体練習を再開

▼6月2日 北海道高野連が独自大会開催を発表。白樺学園が全体練習を再開