初甲子園で全国1勝を刻む。第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に初出場する柴田(宮城)は昨秋、守備からリズムを作り、攻撃につなげるスタイルで、県3位から東北大会準優勝の快進撃を演じた。同校のある柴田町にまたがる白石川沿いの「一目千本桜」は、「さくら名所100選」に入る景勝地。今日19日から連載「柴田七本桜の陣」と題し、チームのカギを握る7人を紹介する。第1回は平塚誠監督(48)。就任12年目でつかんだ甲子園で、桜吹雪のごとく華麗な采配を振る。

花は桜木、男は誠-。時には厳しく、時には優しい指導方針がモットー。平塚監督は選手と対話しながら、チームの和を大切にする。「野球を通して、社会で活躍できる子たちをつくりたい」。口酸っぱく言い続けるのは「君たちの行動が心を映している」。野球でいえばエラーした後に下を向くのではなく、上を向けるかどうか。指揮官は選手の表情に目を光らせながら、「ミスして下を向くようでは、強くなれない。前向きな姿勢で『次頑張る』という気持ちが大事」と説く。

尊敬する大先輩がいる。仙台大の9学年上の聖光学院(福島)斎藤智也監督(57)だ。柴田に赴任して2年目の11年夏。宮城大会直前に「先輩、お願いします」と練習試合を申し込んだ。今では毎年1回以上の練習試合を行う間柄で、試合後は的確な助言をもらう。昨秋の東北大会期間中は電話で相談に乗ってもらい、センバツ初出場につなげた。「本当にお世話になっている。私の指導者としての土台は、斎藤先生のおかげ」と感謝した。

家に帰れば1男1女の父。長男悠一郎さんは仙台一野球部に所属する1年生。中学3年時には「俺と一緒に甲子園目指そうぜ!」と毎日のように“ラブコール”を送った。しかし、父の期待とは裏腹に「やりたいことがある」と県内有数の進学校を選択した。昨秋県大会では準々決勝で直接対決が実現。柴田が6-1で勝利したが、父としては「保護者なので一高を応援したい気持ちもある。それに打ち勝たないといけない」と複雑な心境だった。センバツ決定後には「甲子園、一緒に行けたのにな」と残念がったところ、悠一郎さんは「いいよ、俺は来年行くから」と逆に対抗心に火をつけてしまった。

周囲の期待は大きい。平塚監督は「ワクワク感が強い。甲子園でまずは1勝。OBやお世話になった方々から応援してもらっているので、結果で応えたい」と、「サクラ咲く」吉報を届ける。【佐藤究】

◆平塚誠(ひらつか・まこと)1972年(昭47)10月3日生まれ、仙台市出身。仙台東、仙台大の硬式野球部に所属しポジションは三塁手。96年に泉のコーチで高校野球の指導をスタートさせ、99年から村田監督、03年から石巻コーチ、06年から河南監督を歴任後、10年から柴田監督。13年夏に県準優勝。18年、19年は同4強。右投げ右打ち。血液型A。