初出場の東播磨(兵庫)が、21世紀枠最多の9得点を奪う猛攻で甲子園を沸かせた。延長11回、明豊(大分)にサヨナラ暴投で敗れたが、2盗塁をからめるなど機動力を前面に押し出す“ヒガハリ”野球全開で、甲子園常連校を苦しめた。福岡大大濠は、昨秋九州大会決勝の再現となった人口約5000人の島の学校、大崎(長崎)にリベンジ。具志川商(沖縄)は、八戸西(青森)との21世紀枠対決を制して初戦を突破した。

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紫のアルプスが、甲子園が、一球、一打に揺れた。1点を追う9回1死三塁。東播磨・福村順一監督(48)からサインが出た。「とにかくゴロゴーで点を取れ」。日頃から磨いてきた走塁技術がある。ナインに不安はない。5番鈴木が三ゴロを放つ。相手野手が捕球した時点で三走・高山はすでに本塁を突いていた。あっという間の同点劇。「うちは走塁を磨いている。それで徹底的に点を取る」。2年ぶりに集まった客席の観衆8000人が、“ヒガハリ”野球に魅了された。

知恵と工夫でスタイルを築き上げた。14年から同校を率いるОBの福村監督は、前任の加古川北時代に2度甲子園に出場。当時から走塁を武器としたチームが代名詞だった。10年秋の近畿大会初戦では、藤浪晋太郎(現阪神)を擁した大阪桐蔭に2-0で勝利し、翌春のセンバツで8強に導いた手腕の持ち主だ。

多彩な練習メニューがそろう。速球対策のテニスボール打ちや走者付きのゴロゴー打撃、守備力向上へ地面のコーンを踏まずに飛球を捕る「地雷ノック」もある。豊富な走塁メニューに至っては「数えられないくらい」。昨秋は公式戦10試合で24盗塁、5失策。機動力と守りのチームを作り上げ、初の甲子園をつかんだ。

本番でも足攻めで果敢にプレッシャーをかけ、序盤から幾度も好機を演出。9安打に2盗塁をからめ、9得点を挙げた。延長11回、サヨナラ暴投で力尽きたが原主将は言った。「動くべきときは動く、それができたので後悔はしていない」。9-10。甲子園常連校相手の大善戦に胸を張った。

「走姿顕勢(そうしけんせい)」。走る姿が勢いを表す。指揮官による造語だ。敗れたがチームカラーを存分に発揮し、甲子園に1ページを記した。原主将は「この戦いができて、記憶に残る試合になったと思う」と前を向いた。次は、夏空の甲子園で駆け抜ける。【望月千草】

◆21世紀枠の1試合8得点以上 具志川商が8点、東播磨が9点。21世紀枠の8点以上は11年城南が報徳学園に8-5で勝って以来10年ぶり。

◆サヨナラ暴投 センバツでは16年の渡辺啓五(いなべ総合学園)が高松商戦の10回に記録して以来。