みちのく球児たちが新たな門出を迎えた。昨夏の県独自大会4強の花巻東(岩手)ナインは3年間の青春を過ごした校舎を巣立ち、次のステージへと羽ばたいた。清川大雅主将と大和田快外野手はそろって、関西学生野球の名門・同志社大(京都)に進む。清川は硬式で野球を続けて、社会人野球で都市対抗出場を目指す。

清川は大学でも二刀流で勝負する。打っては高校通算10本塁打、投げては最速145キロ。「どっちもやりたい気持ちが強い。大学では150キロを目指したい」と大台突破を視野に入れる。昨年夏の引退後も、練習は休みなく続けてきた。現2、3年生を相手に打撃投手を務め、投球の精度を磨いた。新球種のシュートも習得。しっかり体をつくり、3月2日の卒業式後に岩手を後にした。

将来は、社会人野球でのプレーを目標にする。「プロ野球選手よりも、都市対抗、日本選手権に出場したい」と強い憧れを持つ。きっかけは高2の冬。強豪・東芝(神奈川)の練習に参加する機会があった。「トップレベルのチームで練習させてもらった。技術の高さもそうだけど、チームの雰囲気が明るくて、野球がとても楽しかった」と貴重な経験を、今後の野球人生につなげる。

最後の夏は、一生に残る思い出になった。コロナ禍の影響で夏の甲子園中止が決定。「岩手から日本一を掲げて、最後の集大成となるはずだった。悔しくて、涙すら出なかった」と振り返る。それでも3年生の晴れ舞台として、県独自大会が開催された。1試合ごとに登録20人のベンチ入りメンバー変更が可能で、3年生の全38人が試合に出場することができた。「3年生全員で挑めた夏は、最初で最後だと思う。一生に残る特別な夏を過ごせました」と、最後は笑顔で高校野球を終えた。

チームメートとの強い絆を感じている。野球部の3年生とは入学から卒業まで、ずっと同じクラスで過ごした。学校でも寮でも、いつでも仲間の存在が近くにあった。「あっという間の3年間だった。本当に楽しかった。絆はかなり深いです」。高校での財産を手に、関西の地で飛躍する。【佐藤究】