<春季茨城大会:常磐大高5-4水戸一>◇5日◇準決勝◇J:COMスタジアム土浦

私学が強い時代にあって県立伝統校の躍進となれば、地元高校野球ファン、OBの熱も一層熱くなる。水戸一は58年ぶりの関東大会出場をかけた常磐大高戦で逆転サヨナラ負けした。

9回裏の守り。勝つチャンスは3度あった。無死一塁で二飛で走者が飛び出したが、併殺を失敗した。けん制で走者を一、二塁間に誘い出すも、挟殺プレーに失敗。1死満塁では一ゴロを失策し、1点差に迫られた。最後は中前への打球にセンターが猛ダッシュしたが後逸した。木村優介監督(36)は「最後は甘さが出ました。挟殺プレーの時、選手には関東大会が見えていたと思います」と言い、2死目がとれない苦しさの中に、OBで「野球の父」と慕われる飛田穂洲氏が残した「一球入魂」の本質も見ようとした。

「ここから強くなろうと言います」

守備の乱れに絡んだ4番で二塁の中山晃靖内野手(2年)は、頭脳明晰(めいせき)を感じさせる言葉で振り返った。「二飛を捕球後、一塁に投げましたが、送球が走者の進路とかぶりました。(一塁手の)野々下さんは捕りづらかったと思います」。挟殺プレーには「ショートに任せ過ぎました。自分も挟殺に入ればよかった。それが影響して野々下さんが追いタッチになったと思います」。

最後の場面、センター栗林の後逸はどう感じたか。「ここは外野が弾むと確認してました。それを計算しての捕球体勢だったと。でも、あまり弾まなかった。二走を刺すしかなかった。全力で前に出た中でのプレーだったと思います」。

あとアウト2つに届かなかったことに、偏差値も名門も関係ない。それでも屈辱の逆転サヨナラの中で現実を正しく記憶して、原因を探ろうとする姿勢は好感が持てた。「こうした場面で自分たちが陥る状況がわかりました。打開するため、みんなでいつものように1回表から1つずつプレーを検証していきます」。その司会は栗林が受け持つ。これも厳しい作業になりそうだが、こうした取り組みがあるからこそ、伝統校として県民から大切にされているのだ。