「イチローイズム」で小園倒した!! 和歌山大会決勝で、智弁和歌山が今秋ドラフト上位候補の市和歌山・小園健太投手(3年)を攻略。19年以来、25度目の夏の甲子園を決めた。8回のダメ押しは昨年12月、同校を指導したマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(47)の助言を生かしたもの。大一番で見事に決め、近畿の甲子園一番乗りを果たした。

8回の攻撃に、智弁和歌山の泥臭い野球が凝縮されていた。2点リードの2死一、二塁で、ゴロが遊撃前に転がる。遊撃手が二塁で封殺しようとした瞬間、誰もが目を疑った。一塁走者の宮坂厚希外野手(3年)が滑り込まず、二塁を駆け抜け、三塁を目指す。あわてた二塁手が宮坂を追い、二、三塁間で挟殺プレーが始まる。その間に二塁走者の大西拓磨内野手(3年)が4点目のホームを踏んだ。難敵・小園に引導を渡す、大きな1点だった。

奇策だろう。中谷仁監督(42)は「『ちゃんとやってよ』と言われた1つ。あの方に。目からウロコでした」と明かした。昨年12月に聞いたイチロー氏の助言だった。普通は二塁にスライディングする。駆け抜けて挟まれるのは計算の上。指揮官は「あの走塁は1年間、相当、練習してきた。『ショートが深いところから二塁に放るとき、スライディングより駆け抜けた方が速い』と」と言う。

まず二塁でセーフになるのが前提で、挟殺プレーのスキを突いて1点を奪う戦法。「最後の最後にあのプレーが出るのは神がかっている。練習試合を含めて初めて。会心の1点」と監督。昨夏の和歌山独自大会での二塁スライディングを見たイチロー氏が選手に「走り抜けた方が速い。智弁和歌山にそういう点の取り方をしてほしい」と伝えた。

中谷監督は「後半勝負。暑いし、小園君の球威や制球で必ずチャンスが来る」と見ていた。思惑通りに6回以降、浮いた球を捉え、適時打3本を浴びせた。昨秋は小園に連敗。センバツも逃したが、宿敵を倒した。朱赤の「智辯」が甲子園に帰ってくる。【酒井俊作】