浦和学院が3年ぶり14度目の甲子園出場を決めた。試合後の優勝インタビューで、森士監督(57)が今夏限りでの退任を電撃発表。グラウンドでの“監督”と呼ばれる吉田瑞樹主将(3年)を中心に、全国の頂点を目指す。

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人さし指を突き上げた浦和学院ナインが、マウンドに集まった。もみくちゃになった吉田瑞は、涙が止まらなかった。「去年、負けた思いがこみ上げてきました」。新チームで臨んだ昨秋県大会で3回戦負け。その責任をずっと背負ってきた。

今大会は全7試合で「4番捕手」。攻守で甲子園への戦いを支えてきた。この日は初回1死一、三塁から先制の中犠飛。打線に勢いをつけ、伝統の「つなぐ野球」を体現した。リードでも4投手をしっかり導き、流れを渡さなかった。

今年のチームの特徴の継投を支え、森監督からは「監督」と呼ばれる。ベンチの指揮官とは、アイコンタクトで意図が伝わる信頼関係がある。「球が来ていません」「まだいけます」。継投のタイミングも一任されている。かつての弱気な性格を変えようと主将に任命した森監督は「立場が人をつくる。冷静に分析できるし、堂々としてきた」と目を細める。

災いが転じて、絆が深まった。今年1月、寮で新型コロナのクラスターが発生。部員やコーチ陣も次々と感染する中で、奔走したのが森監督だった。ドアノブ消毒などの感染対策だけでなく、寮の掃除もトイレまですべて請け負った。今まで見たことのない姿。約6週間、練習ができない厳しい環境下で焦りも感じる中、ナインの胸には監督の思いに応えたいと思いも強くなった。

試合後の閉会式。吉田瑞はマイクの前に立ち、スタンドに向かって堂々と宣言した。「甲子園で森監督を胴上げできるように、精いっぱい戦うので、応援よろしくお願いします」。浦学ナインの思いは、1つだ。【保坂恭子】