専大松戸(千葉)の校歌が、初めて聖地に流れた。今秋のドラフト候補に挙がるエース右腕、深沢鳳介投手(3年)が、直球と変化球を効果的に駆使し、今大会2人目の完封勝利を決めた。センバツ準優勝で、この夏の優勝候補に挙がる明豊(大分)打線を6安打に抑え、11三振を奪った。9回136球の好投で、同校は甲子園で春夏通じて初勝利。センバツ初戦敗退の雪辱を果たした。

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春からの成長を、甲子園の女神に披露した。9回2死一塁。深沢は最後の打者を外角低めの真っすぐで見逃し三振に仕留め、静かにバックスクリーンへ視線を向けた。「0点に抑えられたんだ。よかった…」。張り詰めていた緊張感から解放され、一息ついた。

研ぎ澄まされた集中力が指先まで伝わった。「明豊さんはセンバツ準優勝。自分よりも格上の選手たち。相手の嫌がることをしようと考えました」。5番までに左打者が4人並ぶ相手打線。140キロ前後の直球でひるまず内角を突いた。チェンジアップ、スライダーは丁寧に低めに配し、上位5人で許したクリーンヒットは4回の4番の右前打だけ。巧みに緩急を使い、手玉にとった。

悔しさは甲子園で晴らすしかない。センバツ初戦の中京大中京戦。プロ注目右腕の畔柳と投げ合ったが、7回に決勝のランニング2ランを許し敗れた。「自分の失投で負けた」。走り込みを増やし下半身を強化。「辛い練習を進んでやるようになった」と自分と向き合った。ブルペンでは常に打者を想定。制球力を磨いた。自宅でもボールは手放さず、指先の感覚を忘れないように心掛けた。捕手の加藤にも「春から直球の勢いが増したので、変化球を生かし直球で勝負できるようになった」とミットを通して成長が伝わっていた。

チームのために投げる-。心に決めて、この日のマウンドに立った。タイブレークでサヨナラ勝ちした千葉大会決勝後。涙は流したが「僕の涙は違う意味でした」。うれし涙ではなかった。野手陣が「深沢のために打ち勝つ」と言ってくれた試合で3回3失点で降板。「勝っても悔しかった。甲子園では、チームのために投げる」と誓い、聖地では最後まで投げきった。

「久しぶりに甲子園で勝てるチームだと思うんだ」。大会前、持丸修一監督(73)がつぶやいた。言葉通り、成長したチームは優勝候補を撃破。深沢は「チームが勝つことを最優先に考えられる投手になりたい」と力を込める。悔し涙を笑顔に変え、次も、勝利に導いてみせる。【保坂淑子】

▽DeNA吉見スカウト 去年の秋から、センバツ、この夏と、投球も体も順調に伸びている。まだまだ伸びしろはあると思う。楽しみです。

▽ロッテ永野育成・スカウト部長 躍動感のあるフォームからキレのある直球を投げる。(同じサイド右腕で専大松戸OBのロッテ)横山がリリーフタイプとしたら、(深沢は)先発としての可能性を秘めている。