智弁和歌山が投打の歯車がかみ合い、02年以来、19年ぶりに夏の甲子園決勝に進出した。中谷仁監督(42)は好投した中西聖輝投手(3年)について「素晴らしいピッチングでした。気持ち、投球術、全てにおいて、今年のエースという意地を見せてくれました」と振り返った。

序盤から優位に試合を進めた。1回1死二塁で角井翔一朗外野手(3年)が近江(滋賀)の先発、山田陽翔外野手(2年)の内角速球をとらえ、ライナーで右翼線適時二塁打を放った。中谷監督は「初回、角井のバッティングというのが、チームに『いけるぞ』という勢いを付けてくれたような気がします」と振り返った。さらに岡西佑弥内野手(2年)の中前適時打で加点。2点を先制した。

勝負を動かしたのは1点リードの6回だ。2死一、二塁で大仲勝海内野手(3年)が速球をとらえて、ライナーで左翼線へ。値千金の2点適時二塁打で得点差を3点に広げた。ナインには発奮材料がある。昨年12月に指導を受けたマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(47)の存在だ。この日も中谷監督は言う。「ありがたいこと。あのひと言でみんなが時間を思い出す。苦しいときに励みになる。『ちゃんとやってよ』というひと言。背中を押されて努力した選手も多いんじゃないか」と感謝した。

プロ注目で先発の中西投手は3回に1点を失ったが、安定した投球で9回1失点完投勝利を挙げた。中谷監督は継投について「最後の最後までどこかで継投を。と思っていたんですけど、中西が『最後まで行かせろ』という圧で僕を見てきたので、もう任せました」と笑顔を見せた。

近江との近畿勢対決を制した。00年以来、21年ぶり3度目の優勝に向けて、力強く決勝にコマを進めた。決勝に向け指揮官は「やはり勝つと負けるとでは天国と地獄ぐらい差があるので、しっかりと明日に準備したい」と力強く話した。伝説の野球人の金言が、決勝進出を後押しした。