連続写真で選手のフォームをひもとく「解体新書」。今回は、夏の甲子園で今大会最速152キロをマークしたノースアジア大明桜(秋田)の風間球打投手(3年)です。今秋のドラフト上位候補に挙がる右腕の投球フォームを、日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(46)がチェックしました。

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今年の夏の甲子園でNO・1投手の呼び声が高かっただけに、テレビで観戦させてもらいました。少し力みすぎていた感じはありましたが、うわさ通りのピッチング。体格もがっちりしていて将来性を感じました。今の段階で細かい技術指導は必要ないと思うのですが、私なりに投球フォームの感想を紹介したいと思います。

(1)から左足を上げていく(4)までを見ると、非常にいいバランスをしています。下半身の柔軟性がないという声があると聞きましたが、この左足の上がり方を見る限り、心配なし。下半身が硬く見えるのは、上半身でやや担ぐように投げるため、下半身を使ってないように見えるだけ。私自身も現役時代は「突っ立ち投げ」と言われていましたが、何度も両太ももを肉離れしたように下半身の筋力を使って投げていました。

ここから(5)でヒップファーストの形を作り、(6)では少し右肩を落として打者に向かって勢いをつけていきます。この時に、もう少し頭の位置がセカンドベースの方向に残っていると、上半身の突っ込みが抑えられると思います。

ちょっともったいないのは、(7)から(8)にかけての動き。軸足の右足にもっと重心が残っていれば、(8)の時に右の太ももの付け根に余裕ができます。やや伸びきっている感じがします。ボールを持つ手の位置も、もうちょっとだけ早く上がっていれば、もうワンテンポ速く胸が張れるはず。その分、腕が振り遅れ気味になるから(9)で上半身が担ぐような形になってしまうんだと思います。

一番特徴が出ているのが、(10)と(11)の上半身。上半身が突っ込みすぎていますが、左腕と左肩で強烈な“壁”を作っています。特に(11)での“壁”は強烈。普通なら、この時点で勢いを逃がすように左肩が開き気味になるか、左のグラブを下に落とし気味になりますが、ガッチリと受け止めています。体に負担はかかりそうだけど、これがリリースでの強さにつながっているのでしょう。足の幅が、もう半足ぐらい広くできれば、上半身の突っ込みも抑えられると思います。

フィニッシュの(13)では左足が浮いています。躍動感があるのはいいけど、もっと上半身の突っ込みが抑えられれば、これほど浮かないで安定感も出てきそう。

ただ、ピッチングフォームは個人個人で違うもの。このスタイルの投げ方で似ているのは、広島の森下や栗林。彼らのピッチングフォームを見て、まねしてみるといい。スライダーとカットボールを投げる時に、少し右肘が下がる傾向があるので、変化球の投げ方も研究すると、もっとよくなると思います。フォームの善しあしは総合力で決まります。少し担ぎ気味でも、森下や栗林のように縦のカーブがあれば、大きな武器になりそうです。

ピッチングは本来、少しだけ力を抜いて投げた方がキレのある球が投げられるもの。甲子園では力みすぎて球が垂れたり、抜けたりがあったけど、力まずにコントロール良く投げられるようになれば、すごい投手になるだけの資質は持っています。プロで投げる姿を、早く見てみたいと思わせるピッチャーです。

◆風間球打の選手権大会VTR

1回戦の帯広農戦は雨が降る中でも崩れず、4回まで無安打無得点に抑えたが約50分の中断の後にノーゲーム。3日後の再試合では10三振を奪い、2失点完投した。2回戦の明徳義塾戦では6回で降板。3回に152キロをマークしたが5四球と制球が定まらず、チームも2-8で敗戦した。風間はノーゲームを含めて3日間で計334球を投じた。

◆風間球打(かざま・きゅうた)2003年(平15)10月11日、山梨県甲州市生まれ。奥野田小1年時に野球を始め、同3年時から投手に転向。塩山中時代は笛吹ボーイズでプレー。明桜では1年春からベンチ入りし、同春の地区大会決勝で初登板。今夏の秋田大会準々決勝・秋田戦で、最速157キロをマークした。182センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、長男球道(きゅうどう)さん、次男球星(きゅうせい)さん、四男球志良(きゅうしろう)さん。

<ドラフト候補 4右腕が上位>

高校生で今秋のドラフト候補にまず挙がるのは、ノースアジア大明桜・風間、天理(奈良)・達孝太、市和歌山・小園健太、高知・森木大智の4右腕。いずれも150キロ前後の直球に変化球の質も高く、上位候補と目される。左腕では、今春センバツ優勝の東海大相模(神奈川)・石田隼都、春夏連続甲子園出場の北海(北海道)・木村大成らが高評価だ。投手は他にも、センバツ4強の中京大中京(愛知)・畔柳亨丞、愛工大名電(愛知)・寺嶋大希、大阪桐蔭・松浦慶斗らも挙がる。野手では、夏の甲子園2本塁打の智弁学園(奈良)・前川右京や、甲子園未出場も高校通算56本塁打の昌平(埼玉)・吉野創士がいる。

<今年の主なドラフト候補高校生>

◆投手

木村大成(北海)左投左打 180センチ、76キロ

風間球打(ノースアジア大明桜)右投左打 182センチ、80キロ

深沢鳳介(専大松戸)右投右打 177センチ、75キロ

市川祐(関東第一)右投右打 184センチ、84キロ

秋山正雲(二松学舎大付)左投左打 172センチ、77キロ

石田隼都(東海大相模)左投左打 183センチ、75キロ

田村俊介(愛工大名電)左投左打 178センチ、88キロ

寺嶋大希(愛工大名電)右投右打 179センチ、76キロ

畔柳亨丞(中京大中京)右投右打 178センチ、84キロ

阪口楽(岐阜第一)右投左打 187センチ、89キロ

松浦慶斗(大阪桐蔭)左投左打 186センチ、94キロ

達孝太(天理)右投右打 193センチ、85キロ

中西聖輝(智弁和歌山)右投右打 182センチ、91キロ

小園健太(市和歌山)右投右打 184センチ、90キロ

森木大智(高知)右投右打 184センチ、87キロ

◆捕手

高木翔斗(県岐阜商)右投右打 186センチ、88キロ

松川虎生(市和歌山)右投右打 178センチ、98キロ

◆内野手

有薗直輝(千葉学芸)右投右打 185センチ、95キロ

◆外野手

坂本寅泰(聖光学院)右投右打 183センチ、76キロ

吉野創士(昌平)右投右打 186センチ、80キロ

前川右京(智弁学園)左投左打 177センチ、90キロ