現校名最後の年に、夢をかなえる。来年度から「惺山(せいざん)」に校名が変更となる山本学園(山形)菅井信也投手(3年)が9月上旬、プロ志望届を提出。今夏の山形大会は3回戦敗退も、伸びのある直球と鋭い変化球を武器に15回を投げ、30個の三振を奪った。将来性豊かな「山形のドクターK」が、11日のドラフト会議での指名を心待ちにしている。

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秋空の下、菅井が決意を新たにした。プロでの理想は「三振を取って勝てる投手になりたい」。好きな野球選手はマリナーズ菊池雄星投手(30)。西武時代の17年にはパ・リーグ最多勝と最優秀防御率を受賞した左腕を目標に、着実に成長してきた。

1年秋からエースナンバーを背負い、昨秋の県大会敗戦後は、課題の制球向上を目指した。「ある程度(コースに)まとまるようにフォームを改善し、ボールに力が伝わるように体を作ってきました」。以前は体重移動がスムーズにできなかったが、足が接地した時に体重を前に乗せるように修正。また、オフ期間の体作りの効果も表れ、「体重や筋力がついたことで、スピードや変化球のキレも増した」ことを実感。球速も昨年6月の最速136キロから143キロまで伸ばした。

集大成となった今夏は、寒河江工との初戦で7回17奪三振2失点と好投。だが、羽黒との3回戦は8回13奪三振4失点完投もむなしく3点差で敗戦。それでも、ゆったりとしたフォームからの直球と決め球のスライダー中心の投球で打者を翻弄(ほんろう)。春を含め公式戦5試合、36回で56個の三振を積み上げた。

敗戦後は夏の甲子園をテレビ観戦。日大山形の最速150キロ右腕・滝口琉偉(3年)の投球に、「ボールの速さがすごく、ピンチの場面で自分のピッチングができるのも気持ちの強さがあると思う」と刺激を受けた。新チーム始動後は、直球の威力アップを掲げ、体幹トレーニングなどで筋力強化に取り組みながら、週4日は部活動に参加してきた。

同校出身者では18年に東日本国際大(福島)の粟津凱士投手(24)が西武から4位指名を受けたが、まだ同校から直接プロ入りしたケースはない。もし菅井が指名されれば初の快挙。山本学園として臨む最後のドラフト会議で緊張しながら吉報を待つ。【相沢孔志】

◆菅井信也(すがい・しんや)2003年(平15)6月28日生まれ、山形・南陽市出身。小学3年時に赤湯ワイルドキッズで野球を始める。赤湯中では軟式野球部。山本学園では1年夏からベンチ入り。背番号1は同年秋から。182センチ、75キロ。左投げ左打ち。50メートル走6秒4。遠投102メートル。家族は母と姉。好きな選手はマリナーズ菊池。