運命の誕生日ドラフトがまもなくやってくる。11日のドラフト会議で上位候補に挙がるノースアジア大明桜(秋田)の最速157キロ右腕、風間球打(きゅうた)投手(3年)は12球団OKの姿勢を示し、そのときを今か今かと待つ。

ドラフト1位、160キロ、複数タイトル獲得といった夢の実現へ-。9日にはソフトバンクが1位指名を明言したドラフト最注目右腕は、18歳初日に新たな1歩を踏み出す。【取材・構成=山田愛斗】

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「球打」の名前を背負う野球の申し子が、運命の日を迎える。03年10月11日に生を受けてから6575日。ドラフト当日を18歳とプロ野球選手、2つを同時に祝う特別な日にする。

「誕生日なので、やっぱりドラフト1位という最高なプレゼントをほしいと思っています」

今までで一番の誕生日は16歳を迎えたときだ。19年、秋季東北大会1回戦の仙台育英戦。「5番左翼」で先発し、2打数無安打(三振、左飛)だった。6回途中交代で、チームも1点差で惜敗。それでも「打席に入ってチームメートがハッピーバースデーを歌ってくれて、その後に仙台育英のスタンドも歌ってくれたのがうれしくて印象に残っています」。忘れられない1日になった。

明桜での成長速度は異次元だった。入学時に最速135キロだった直球は1年秋に141キロ、2年夏に150キロ、3年夏に157キロと、コロナ禍をものともせず、22キロと大きく更新した。最初で最後となった今夏甲子園では2試合に先発し、計15回を4失点18奪三振。大会最速の152キロ含む150キロ台を連発した。

入学時に輿石重弘監督(58)と「ドラフト1位」「150キロ」という2つの目標を掲げた。指揮官は「目標設定して僕も半信半疑でしたが、それぐらい伸びる要素があると思っていました。順調に2年生で150キロを達成し、3年生でプロの目標を達成できる状況になったなと」。試合がない冬場はランメニューに注力。ウエートトレーニングや体幹強化にも励んだ。昨秋からは筋力や心肺機能を高めるエルゴメーターを使った練習も取り入れ、肉体をさらに進化させた。

「スーパー1年生」と注目を集めた19年春の時点で181センチ、80キロと、現在の183センチ、84キロとはさほど変わらない。その礎になったのが中学時代に所属した笛吹ボーイズ(山梨)での日々。チームとしてフィジカル強化に取り組み、風間も在籍当時はトレーナーから週1回の指導を受けた。練習時にはおにぎりを6個以上持っていく、食トレも実施。今に生きている。

市和歌山・小園や高知・森木と並んで「高校BIG3」と呼ばれる存在になった。それでも「自分ではその2人というか、いろんな投手の方が上だと思っていて、何年後かに追い越したい」と謙虚に受け止める。

角度のある直球、落差の大きなフォークと抑えの適性も兼ね備えるが、プロではあくまでも先発志望だ。

「まずは先発でいきたいです。そこで何十勝もして、いろんな賞を取っていきたいと思います」

今夏は157キロに到達したが、目標にしていた数字に1キロ及ばなかった。

「158キロは達成できなかったが、この目標に向かって諦めずに3年間やってきたのは成長につながりました。プロに行ったら160キロが目標なので、しっかり達成したいです」

「世代最速の男」が18歳の誕生日に夢の扉を開く。

◆風間球打(かざま・きゅうた)2003年(平15)10月11日生まれ、山梨県甲州市出身。奥野田小1年時に野球を始め、同3年時から投手に転向。塩山中時代は笛吹ボーイズでプレー。明桜では1年春からベンチ入りし、同春の地区大会決勝で初登板。今夏の秋田大会準々決勝・秋田戦で、最速157キロをマークした。甲子園では2回戦で敗退。家族は両親、長男球道(きゅうどう)さん、次男球星(きゅうせい)さん、四男球志良(きゅうしろう)さん。183センチ、84キロ。右投げ左打ち。