日本高野連は10日、第94回選抜高校野球大会(22年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。

各都道府県が推薦した候補校のうち、全国9地区から1校ずつ選んだもので、札幌国際情報(北海道)、只見(ただみ・福島=東北)、県太田(関東=群馬)、丹生(にゅう・北信越=福井)、相可(おうか・東海=三重)、伊吹(いぶき・近畿=滋賀)、倉吉総合産(中国=鳥取)、高松一(四国=香川)、大分舞鶴(九州)が選出された。

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高松一ナインが暗闇の中、白球に目を凝らした。進学校で、授業後の午後4時から市営の球場を借りて練習。まともな照明はなくティー打撃などで汗を流した。「何苦楚魂」だった。

わずか13人の選手で、今秋の香川県大会は強豪の丸亀城西と小豆島中央に連勝して8強。「文武両道」も高評価だ。山下悠馬主将(2年)は「素直にうれしいですが、まだまだ実力が足りない」と気を引き締めた。

甲子園は春夏4度出場。72年夏が最後で、センバツは49年を最後に遠ざかる。搆口顕太郎監督(36)は選手に「偉大な先輩がいる。誇りを持って学校生活をキチンとしなさい」と言う。西鉄の主砲だった中西太氏がOBで49年センバツに出場し、同校の聖地初勝利に貢献。指揮官が「中西さんの時代は学校にグラウンドがあってすごく練習していた。『何苦楚魂』です」と中西氏の座右の銘を持ち出せば、山下は「ライナーだと思った打球が普通に柵を越えたと聞きました」と驚き「怪童」伝説は語り草だ。

伝統校も野球人口減少のあおりを受けて単独チーム存続のピンチだ。1年生は4人。9人の2年生が来夏に引退後は新入生次第で窮地に陥る。山下は今秋大会前、同級生に「後輩のために結果を残そう」と言い続けた。堅守が売りで冬は打撃を磨く。最善を尽くして吉報を待つ。【酒井俊作】