木更津総合(千葉)が山梨学院との関東勢対決をタイブレークのサヨナラ勝ちで制した。エース越井颯一郎投手(3年)が166球を投げ切り、6安打1失点の完投。幼少時、父貴之さん(49)手作りの練習場とトレーニング器具で作り上げた野球で躍動した。

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「ワクワクが止まりません!」越井は、山梨学院の好投手・榎谷礼央投手(3年)との対決を制し胸の高鳴りを抑えきれない。「楽しかった。試合前からワクワクしていました」と笑みがこぼれた。

巧みなマウンドさばきがさえた。「インコースをつぶせば、ヒットの確率は少ない」。内、外の出し入れでテンポよく打たせてとり、緩急をつけ相手打者に的を絞らせなかった。

延長に入っても、球威は衰えない。「コースを狙えば打ち取れるとわかった」と制球力重視。じっくり間をとる投球にシフトチェンジすると、13回までの4回は無安打。「強いボールでコースに決める練習をした成果」と胸を張った。

越井の原点は、父貴之さん手作りの「越井球場」だ。「小さいころの野球が僕の基礎。これがなかったら今の自分はない」と力を込める。兄大晴さん(20)の後を追い、小1で野球を始めると、漫画「巨人の星」の星一徹のような指導が始まった。

高校球児だった貴之さんは現役時代、投手をケガで断念。その経験を生かし「基礎をしっかり身につけさせたい」と練習に協力。自宅裏の林を切り開き、プレートを埋め込み即席ブルペンを設置。キャッチャー防具を購入し、息子たちの球を受け続けた。木と木の間にはネットを渡し、ティーバッティングの練習場に、約10種類のトレーニンググッズも手作り。チームの練習が休みのときも、家族で半日は練習した。「もう嫌だ」と泣きながら取り組んだ練習が、基礎だけでなく、強い精神力も育てた。越井は「体重移動、重心のため方。そういう基礎が、他の人よりも先にできていた。家族のおかげでいい経験ができたと思います」と感謝した。

現代版・巨人の星で全国制覇へ!? 貴之さんは「星一徹? そんなに厳しくないですよ」と謙遜するが、熱血指導で甲子園1勝を手にした。越井は「初戦を勝てたのは大きい。ノッていけると思っています」と、静かに頂点を見つめた。【保坂淑子】

◆ヒミツ道具メモ 越井の父貴之さんは、野球を始めた2人の息子のために、ホームセンターへ通い手づくりのトレーニング器具で練習させた。3キロの重りにヒモをくくり付け巻き上げる器具で、手首を強化。棒と穴の空いたボールをヒモでくくりつけ、スイングの練習。かまぼこ板の大きさに切った板を投げる練習では「回転数をあげる感覚が養えた」と感謝した。

◆越井颯一郎(こしい・そういちろう)2004年(平16)7月8日生まれ、千葉市出身。小1から野球を始め、小3から千葉市リトルに入団。東関東大会優勝、全国大会準優勝。千葉北シニアで東関東選抜、シニア日本代表。木更津総合では1年秋からベンチ入り。2年秋からエース。178センチ、75キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。